横歩取り道場(第4巻)8五飛戦法


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評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:2003年1月

シリーズの横歩取り編第四弾は、居飛車党の後手番作戦としては現在でも有力視されている横歩取り8五飛(の一部)について解説されています。

1ページに3枚の局面図というスタイルは従来の他シリーズと同様であり、全219ページ、全七章の構成となっています。

第一章 基本図までの駒組み
第二章 ▲3八金・3七桂型
第三章 ▲3六歩に△2五歩型
第四章 ▲3八金・1六歩型
第五章 ▲3七桂・4八金型
第六章 ▲3七銀・4六銀型
第七章 ▲3八銀・3五歩型

本書は、先手が▲5八玉と構える形に絞って収録されています(▲6八玉型は次巻に収録)。

しかし、現在も多くの対局や研究がなされている戦法であるせいか、変化はこれまで同様、基本的には多岐に渡って記されているのですが、結論のところで「優劣不明」や「以下一局」という書き方がちょっと目につくことが多い気がします。

それとここのレビューで何度も書きましたが、本シリーズは「辞書」的な使い方にほぼ限定されるため、「入門書」としての使い方には向きません。

よって、これから横歩取り8五飛を始めようといった方が最初に手にするのには、ちょっと向いていないように思います。

逆に既に知っている方からすれば、本戦法の研究や進化の早さという観点からすると、本書に記載されている順の中には、現在では結論が出ていて使えないのではないか?と思う変化もあるので、正直どういった方に勧められるか判断が難しいところです。

しかし発行から1年半が経過し、また本戦法が発行後もプロ間で盛んに指された上で定跡として確立され、あるいは従来の結論が変わったりしてきたわけですし、最新の変化が記載されていないのは仕方のないことなのでしょう。

そういったことを踏まえた上で、「辞書」として使う分には戦力になると思います。

蛇足ながら、横歩取り8五飛戦法の入門書としては『8五飛戦法』(森下卓著・河出書房新社)や『横歩取り△8五飛戦法』(中座真著・日本将棋連盟)といった棋書があります。これらのレビューについてはまた後日取り上げたいと思います。

それにしても、横歩取り△8五飛ほど定跡手順の整備や新手、新構想の出現が頻繁に現れる戦法もないのではないでしょうか?

いつの日か「横歩取り△8五飛の急所」みたいな感じで、集大成と言えるような定跡書が出版されたらいいな、と思うのは私だけではないと思うのですが・・・(笑)

評価は難しいところですがBと判断します。ただし、本書を読む人によってAに近いBから、Cに近いBまで幅があるように思います。(投稿:ももさん 3級)