中村修:現代矢倉の基礎知識(下巻)

森下システムを解説しています
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:1994年6月

前巻となる「現代矢倉の基礎知識 上巻」では▲3七銀戦法が解説されていましたが、本巻では90年代前半〜半ばの矢倉界に一大旋風を巻き起こした「森下システム」がテーマとなっています。

MYCOM「イエローブック」シリーズで採用されていた「±(先手有利)」「=(互角)」「!(好手)」「?(疑問手)」などの形勢判断マークが本シリーズでも登場し、盤面図や棋譜を見る際の助けとなっています。

第1章 3七桂戦法
第1部 基本図まで
第2部 △7三銀の変化
第3部 △5三銀の変化
第4部 ▲1六歩に△5五歩
第5部 1六歩型の▲5七銀
第6部 1六歩型の▲4六歩
第7部 1六歩型の▲1七香界 第8部 7九玉型
第9部 後手の工夫

第2章 3一角型の対策
第1部 7三銀型
第2部 9四歩型

森下システムの天敵「スズメ刺し」

第2章 3一角型の対策 9四歩型より:図は△5五歩より
▲5五同歩△8五桂▲8六銀△9七桂成▲同銀△9六歩▲同銀△同香▲同香△同飛▲9九飛△9七歩▲同香△同角成▲同桂△7五歩で難解な形勢です。

5筋を突き捨ててから△8五桂を敢行するのがこの形での正しい手順です。この5筋の突き捨てがないと、上図の手順△9六歩に▲8六銀とかわされ、以下△8五歩▲8四桂△9一飛▲4六角されてしまいます。この角の睨みを予め遮っておくのがこの△5五歩なのです。

本書で解説されている定跡は羽生、森内、佐藤、谷川、米長、中原、森下…といった矢倉のスペシャリストたちの将棋を中村八段がまとめたものですので、先後どちらに肩入れすることはなくストイックなつくりになっています。

また、プロの実戦に現れなくてもアマチュアの実戦に出てきそうな変化も拾っていますので、東大将棋ブックス「矢倉道場」シリーズほどの難解さはありません。

森下システムは早めに玉を囲うために、△9四歩からのスズメ刺しを狙われると苦しいということで、本家の森下九段が同戦法を封印することになります(その後復活)。本書ではそのスズメ刺しも最終章で30ページほどのページを割いて解説しています。

森下九段の名著「現代矢倉の思想」、その続編となる「現代矢倉の闘い」では森下システムは触れられていないので、「羽生の頭脳 6巻 最強矢倉・森下システム」が物足りないと思う有段者の方には現在でも十分参考になると思います。