矢倉道場 第6巻 続・森下システム

深浦新手で見直されて再び桧舞台へ
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評価:B
対象者:5級〜六段
発売日:2003年11月

矢倉道場 第5巻」の続編となっており、テーマは引き続き「森下システム」です。
前巻では天敵「スズメ刺し」を巡る攻防、特に森下システム復活の狼煙を上げることになった「深浦流(前巻レビューの盤面図を参照)」について詳しく見ていきました。

「深浦流」でスズメ刺しに対して十分戦えることがわかると、後手はそれ以前の対抗策である「△6四角型」を再び採用するようになりました。

本書ではこの△6四角型を基本に△5三銀から△5五歩と5筋の交換から作戦勝ちを目指したときの攻防を中心に見ていきます。また先手が早めに▲3八飛と回って後手に△4三金右と上がらせることで、△5二金型のスズメ刺しを牽制するいわゆる「郷田流」にも触れています。

全219ページの7章構成で、実際の進行、変化手順を示す盤面図は見開きで6枚配置されています。目次は以下のようになっています。

第1章 基本図までの駒組み
第2章 ▲1六歩に△1四歩型
第3章 ▲1六歩に△5五歩型
第4章 ▲2六歩に△7三銀型
第5章 ▲4六歩に△2二銀型
第6章 ▲8八玉に△9五歩型
第7章 △4四歩に▲3八飛型

力強い金上がり

第2章 ▲1六歩に△1四歩型 より:図は▲5五同歩まで
後手が5筋の歩交換を狙った△5五歩に対して▲同歩と応じたところです。後手はもちろん△5五同角ですが、以下@▲4七銀は△5四銀と立たれて好形を築かれてしまうので、A▲5六金と力強く上がって角を攻めるのが本筋となります。

時系列で見ると本書のテーマのほうが先に登場しているので、読む順番は5巻と6巻どちらからでも大丈夫です。併せて読めば「森下システム」に関する定跡はまず完璧でしょう。

発売から数年経った現在、掲載定跡の「鮮度」が気になる方もいらっしゃると思いますが、主流となっている▲3七銀戦法のように新手が登場しているわけではないので当分の間は心配いりません。なお、本巻をもって「東大将棋ブックス 矢倉道場」シリーズは完結となります。

追記:第5章の第1節では、出典は明記されていないものの、米長永世棋聖が悲願の名人位奪取を果たした第51期名人戦の第4局の進行手順をそのままベースにして解説が進められており、「あの一局がこの形の決定版になったのか」と思うと同時に、なんだか懐かしい気持ちにもなりました。