痛快!ワンダー戦法

いわゆるB級戦法を紹介しています
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2007年11月

本書は、専門紙「週間将棋」に連載されていた同タイルの講座を再構成して単行本化したもので、居飛車と振り飛車のいわゆる「B級戦法」を解説しています。

他の出版社を含めると既に類書が出ているためか、新戦法と分類されるものは少なく、ポンポン桂、玉頭銀、アヒル戦法、坂田流筋違い角など従来からある戦法に独自のアレンジを加えたものが多くなっています。

全223ページの2章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。紹介されている戦法は以下のようになっています。

第1章 すぐに使えるワンダー戦法
▲7七角省略中飛車 / 中飛車左穴熊(対振り飛車編) / 中飛車左穴熊(対居飛車編) / 矢倉・左美濃 / 四間飛車の逆襲端攻め / 地下鉄中飛車 / 2枚銀向かい飛車 / 5七銀型四間飛車 / 陽動相振り飛車 / 新玉頭銀 / 右四間6筋位取り / 中住まい向かい飛車 / 対升田式・地下鉄飛車 / 6筋不突居飛車穴熊

第2章 すぐに戦うワンダー戦法
新アヒル戦法 / 新鎖鎌銀 / 阪田流筋違い角 / 時間差陽動振り飛車 / 陽動石田流 / 筋違い角向かい飛車 / 陽動中飛車 / カニ囲い型右四間 / 古典流四間飛車破り / 升田式角交換型向かい飛車 / 7八金型9筋飛車 / 7七銀型四間飛車 / 新・筋違い角向かい飛車 / 角交換型菊水矢倉

飛車先を受けないのがポイントです

▲7七角省略中飛車より:図は▲5六歩まで
角頭を受けずに▲5六歩と突くのがこの戦法の骨子です。△8六歩の飛車先交換には、以下▲同歩△同飛▲7八金△8二飛▲8七歩△4二銀▲7七桂△7四歩▲5九飛△5三銀左▲7九角△4二金上▲6八角△6四歩▲8九飛と地下鉄飛車から8筋を逆襲するのが狙いです。

居飛車が飛車先を交換せずに△7四歩▲7八金△6四歩▲4六歩△4二銀と慎重に駒組みをしてきた場合には▲7七金と上がっておきます。これは居飛車が△7二飛から△7五歩と7筋交換に来れば、▲同歩△同飛に▲7七角省略を生かして、▲7八飛から反撃する構想です。

本書は「週間将棋 編」とだけ表記されており、著者については書かれていません(手筋関連の週将ブックスは大体このパターンです)。しかし、週間将棋編集部はアマ強豪や元奨励会の方が在籍しているためか、他のB級戦法の本に比べると研究手順がかなり細やかで、一通り読んだだけでは十分に使えそうな戦法ばかりです。その分、従来の本に比べると対象棋力が少しあがっているのかな、という印象を受けました。

不満点があるとするなら、「▲7七角省略中飛車」や「2枚銀向かい飛車」などの解説で、駒組み完成の段階で「作戦勝ち」として終了している点です。手順を尽くして組み上げたものの、従来の形に比べてどの編が優れているのかが書かれていない戦法もいくつかあるのも気になりました。

B級戦法の本としては派手さがなく全体的に地味な感じで、どちらかというと定跡書に近い作りとなっています。気軽に読めますが、指しこなすにはそれなりの研究が必要なものばかりです。

ハメ手っぽく一発狙う本ではないので、気になる方は書店で内容を確認してから買った方がいいでしょう。この本が好きな方なら、対四間飛車における糸谷流右玉などを解説した「我が道を行く定跡の裏街道」なども参考になるでしょう。