藤井猛:藤井システム−升田幸三賞受賞戦法

対左美濃はこの一冊でほぼ完璧です
この本の詳細をAmazonで見る

評価:S
対象者:8級〜三段
発売日:2002年11月

タイトルを見ると多くの方が、対居飛車穴熊における例の形を連想するかと思いますが、本書の『藤井システム』とは、対左美濃で△7一玉・7三桂・8四歩から玉頭に狙いを定める戦形を指しています。

第一章「斜め棒銀速攻型」
第二章「▲4五歩早仕掛け-▲6八金型」
第三章「▲4五歩早仕掛け-▲6九金型」
第四章「棒銀」

この形のポイントは
@△8二玉の一手を節約して、△7三桂から△6五歩として居飛車に金銀4枚 の左美濃を許さない。
A△8四歩から相手玉の急所である8五の地点を狙うので、△7一玉型の方が戦場から遠い。
B8二にスペースがあるので△8三銀・6三金から△8ニ飛として、飛車も相手玉頭へ活用できる。
C持久戦を狙い撃ちしたものではなく、柔軟性のある構えなので急戦にも対応できる。
という点が挙げられると思います。

この指し方が登場して優秀性が認められて以来、居飛車側の左美濃採用率はガクッと落ち、プロ棋戦で左美濃を見ることはほとんどなくなりました。

207ページ、見開きに局面図が4枚の全四章構成です。

第一章 四枚左美濃粉砕編
第二章 ▲5七銀型振袖飛車打倒編
第三章 端飛車編(振り飛車が先手で▲2七銀・4七金から▲1八飛)
第四章 実戦編(対石川・室岡・行方戦の計三局を自戦記風に)

解説の合間に小さくはありますが樹形図(チャート図)が入っていますので、一つ一つの手順を追っていく時に「どの手が良くて、どの手がダメだったのか」を頭に残しながら、読み進めることができます。

解説されている変化量は決して少なくはありませんが、一手一手に全く無駄がない、まさに「システム化」された戦法ですので、難しいと感じる方も盤で並べれば大丈夫です。

居飛車側(先手)が▲7五歩と振り飛車の桂頭に突き捨てを入れてから、▲2四歩と大決戦にいく(以下飛車角交換)有力な変化は自戦記に載っていますが、詳しく勉強したい方は『これが最前線だ!(P37〜40)』・『羽生善治の戦いの絶対感覚(P111〜114)』を併読すれば完璧だと思います。

内容・価格ともに優れた一冊ですので、四間飛車党の方は持っておけば必ず役に立つでしょう。