小林健二:スーパー四間飛車 最新版1 急戦!居飛穴破り


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評価:B
対象者:8級〜三段
発売日:1997年2月

振り飛車党のバイブルともなった「スーパー四間飛車」の出版から3年、本シリーズでは「最新版」と銘打って、その後の新手や新戦法を急戦編と持久戦編の2冊に分けて解説していきます。

全238ページの3部構成で、見開きに盤面図4枚配置されています。目次は以下のようになっていますが、大橋宗桂の時代から四間飛車の歴史を解説する第一部が完全に蛇足で、42ページも持っていかれるのが不満です。

戦法の歴史を振り返るコーナーは、同じく小林九段の著書「スーパー穴熊 完結編」でも第一部に登場しますが、比較的歴史が新しく、地下鉄飛車対策などが載っているのに対し、本書の方は読みどころがありません(一部は講座と重複)。

第1部 振り飛車のルーツと流れ
第2部 スーパー四間飛車の原点
第3部 急戦!居飛穴破り
浮き飛車作戦 / 端角戦法 / ▲居玉急戦 / ▲居玉急戦 / 6筋早仕掛け

端角戦法

第3部 急戦!居飛穴破 端角戦法より:図は▲6八銀引まで
対局者は掲載されていませんでしたが、僕の記憶が正しければ▲有吉−△小林(健)戦のはずです。△4五桂を予め避けた銀引きですが、それでもかまわず△4五桂と跳ねます。以下▲5八飛には△6五歩▲同歩△同銀▲6六歩に△7六銀と強く切り込み、▲同金に△6七歩の軽手一発。瞬間的には銀損ですが、▲6七同銀は△5七桂成りでこの攻めは切れません。戻って▲5八飛では▲2四歩が最善手となります。

前作では四間飛車側が全て先手でしたが、本書では後手番もテーマとして採り上げられており、一手の違いで優勢にならないまでも、四間飛車が指しやすいと思われる手順までを解説しています。

また、他の違いとしては、前作の中に登場する盤面図は小林九段の研究図であったのに対し、本書ではそれに加えて、小林九段以外の対局者による実戦図もベースとなって各戦法が紹介されています。

特に、上記の目次にある居玉急戦というのは、勘のいい方ならお気づきかと思いますが、「藤井システム」のことで、公式戦の第一号局となった「▲藤井猛−△井上慶太」戦を初手から終局まで掲載しています。

藤井システムの話が出るたびに、必ずと言っていいほどこの対局が紹介されますが、手も足も出ずにボコボコにされた井上八段が可哀相過ぎます(笑)。「いつまで俺の将棋を晒すんだよ!」と内心思っているかも…

端各戦法は前作のページに局面図を掲載しているので、そちらを参考にしてほしいのですが、居飛車が早めに飛車先を伸ばすと△1三角とは上がれません。早めに△1四歩を突いてしまうと居飛車が穴熊にしなかったときに影響が出るからです。

そこで本書では、その代替案として△5四銀と角頭を狙い▲6六歩と角道を止めさせてから、△2二飛〜2四歩と2筋を逆襲し飛車をぶつけます。飛車交換を拒否されたら△1四歩〜1三桂から2五飛とやはり飛車交換を強要する、二段構えの作戦が解説されています。

他の戦法では、居飛車穴熊を目指した瞬間に△4五歩として、角交換を拒否されたら△3五歩〜4四飛から立石流の駒組を狙う浮き飛車戦法なども紹介されています。ただし、こちらの方は佐藤康光「最強居飛車穴熊マニュアル」や深浦康市「これが最前線だ!−最新定跡完全ガイド」などで具体的な対策が掲載されていますので、そちらの方も目を通しておく必要があります。

盤面図が見開きに4枚の割には、1ページあたりの進行がゆっくりなので、初級者の方でもわかりやすく読めるでしょう。出版から10年近く経った現在でも十分に読む価値がありますが、前述の通り第一部の歴史解説が余分なので前作より評価を落としました。

続編となる「スーパー四間飛車 最新版2 撃破!居飛車急戦」では、対棒銀、斜め棒銀、▲4五歩早仕掛け戦法などを解説していきます。