久保利明:久保流四間飛車(上) 棒銀撃破!

対急戦は先後の差が大きいのがポイント
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評価:B
対象者:8級〜2段
発売日:1997年9月

MYCOM『振り飛車新世紀』シリーズの第2弾は、「捌きのアーティスト」と称される久保八段が、対棒銀における四間飛車の指し方を解説しています。

本書は既に絶版になっていますので、対棒銀の久保流と呼ばれる指し方を勉強したい方は「久保利明:最強四間飛車マニュアル 急戦編」を参考にしてみてください。

全223ページで前半が講座、後半が久保八段の自戦記という構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。

第1部 定跡編
棒銀対策 後手四間飛車編
棒銀対策 先手四間飛車編
第2部 実戦編
疑問の構想 対▲脇謙二七段
辛抱が実る 対中田章道六段
大きな自信 対加藤一二三九段
詰みを逃す 対阿部隆六段

棒銀対策 後手四間飛車編より:△6四角まで
以下、▲3三歩成△同桂▲4四歩で銀が死んだように見えますが、△2五桂が必殺の返し技で▲3二飛成は△同銀と手順に銀が逃げられます。また▲3三歩成△同桂に▲同角成と飛び込むのは、△同飛▲同飛成に△1一角で居飛車しびれます。

居飛車棒銀が▲3五歩と仕掛けた手に対して△6五歩(△5一角、4二角もある)と突き越し、△6四角を狙う、あるいは交換した角を△6四角と絶好の位置に打つ、また変化手順によっては△6三飛と転換して主戦場を6筋にするのが久保流の狙いです。

本書ではまず△5一角と4二角の一般的な定跡手順から見ていき、最後にこの△6五歩を解説しています。ただし、△6五歩は指しすぎの恐れもあり、▲6六歩△同歩▲同銀と6筋を争点とされ、逆に位を取られる恐れもあり、一長一短です。

続いて先手が四間飛車の場合の違いを見ていきます。急戦の場合は先後の違いが大きく、対棒銀でも一手早く▲4五歩が入るので、角を▲6八角から▲4六角と好位置に転換することができます。

ただし、本書では先手四間飛車の場合は▲5九角〜4八角から6八金とがっちり受ける手順が中心に解説されています。後半が自戦記のため、棒銀一つに絞っても先手番と後手番のそれぞれをテーマにしているため、消化不足の感が否めません。

高段者の方には物足りない内容なので、久保流を含めた対棒銀をしっかりマスターしたいなら「四間飛車の急所 Vol.3 急戦大全 下巻」がよいでしょう。△1二香車・4二金・5三角で仕掛けを待つ対望銀「最強の構え(by 藤井九段)」もばっちり解説されています。

なお、続編となる「久保流四間飛車(下) 居飛穴粉砕!」は、対居飛車穴熊における居玉での速攻(藤井システムっぽい)がテーマですので、上・下を合わせて読む必要はありません。