将棋世界BOOKS 四段コース問題集

比較的良質な問題が多い
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評価:B
対象者:1級〜三段
発売日:2009年9月

専門誌「将棋世界」を購読されている方なら、免状の取得に興味はなくても、ご自身の棋力の再確認や腕試しに「昇段コース」の次の一手問題にチャレンジしていることと思います。

コースはそれぞれ「級位コース(1〜10級)」「初・二・三段コース」「四・五・六段コース」となっているのですが、本書はそんな同誌の人気連載コーナー「昇段コース」の問題から四段レベルの問題を109題厳選し、加筆・修正したものです。

全222ページの3章構成で1ページにつき問題が1問出題されます。また、問題図の下に簡単なヒントが、解説のページには実際に「昇段コース」に応募した読者の正解率が明記されています。目次は以下の通りです。

  • 序盤編(第1〜18問)
  • 中盤編(第19〜52問)
  • 終盤編(第53〜109問)
飛車を逃げる手はありません

中盤編 第19問より:図は△8七角成まで
飛車取りに構わず、▲6五桂と跳ねるのが正解となります。対して△同桂は▲7一飛成が、また△同歩は▲7三飛成でいずれも先手良しとなります。

したがって、▲6五桂には△7八馬としますが、以下▲5三桂成△同金▲4二銀と例の美濃崩しの手筋が登場します。▲4二銀に△同金は▲3一銀が、また△5一桂と受けるのは▲4一銀成△同銀▲5一龍△5二銀打▲4二銀で先手勝ちです。

7筋に目をつけると…

中盤編 第35問より:図は△6二飛まで
不覚にも僕が間違った問題です。ここでは▲7五歩が正解です。△同歩は▲7四歩で桂取りが確定します。かといって△同角だと▲9五角△7二飛に▲7六歩で角が死んでしまいます。以下△9四歩と先手角との刺し違いに来られても、▲7五歩△9五歩に▲6三角が厳しい一手となります。

後手の狙いを看破する

終盤編 第79問より:図は△9二玉まで
後手が指した△9二玉は次に△9三桂▲9四玉の際に△8二桂(先手玉は詰み)と打つスペースを作る狙いです。この狙いを看破すれば正解は…

そう正解はその桂打ちのスペースを消してしまう▲8二飛です。これに対して△同玉は▲6一龍とすれば、飛車を渡しても先手玉は安泰のため、先手勝ち。▲8二飛に△9三玉と逃げても、▲6一龍△同銀▲7一角で後手受けなしです。

送りの手筋を思い出す

終盤編 第103問より:図は△5七桂成まで
これはよくある筋の問題です。正解は焦点に放り込む▲9三銀です。対して△同桂は▲8一金、△同香は▲9二金△同玉▲7二龍△8二合駒▲8四桂以下の詰み。残るは△同玉ですが、▲7二龍で手持ちに桂馬があるため上下からの挟撃があり、先手の勝ちです。

四段レベルの問題だけあって、直線的な手は少なく、手筋の組み合わせや正解手の次に好手を狙うような曲線的な手を読むことが求めれられます。

少し古いですが森信雄六段の「スーパートリック」に代表される「創作次の一手」のように、アクロバティックな手を堪能するエンターテイメント色の強い本ではありませんので、真剣に問題に向き合えば上級〜三段クラスの方なら勉強になるでしょう。

正解図が小さく、解説欄のスペースが割りとゆったりとあるので、正解手の解説だけでなく、他の候補になりそうな手の駄目なところを説明しているところもいい。

加筆・修正したとはいえ元々は「将棋世界」に掲載された問題がベース。
にも関わらず、同誌を1991年から読んでいる僕が「あ、こういうの前にあったよね」という感じがあまりなかったのは何故なんでしょうか(笑)。

ちなみに終盤編で失速したため、僕の正解率は97/109問中でした。
実戦と違ってヒントが書いてあるし、「問題図には作戦勝ちに持ち込める・勝ちを決定づける・大逆転の一手・即詰みのどれかが必ずある」ということもわかってますから、もう少し何とかなったかも。

上記の4問がわからなかった方は一読の価値ありです。本書の姉妹編として「免状が取れる!初段コース問題集」「将棋世界BOOKS 五段コース問題集」も刊行されていますので、興味のある方はご自身の棋力のワンランク上のものをお選びください。