大内延介:次の一手でわかる寄せの決め手

寄せの基本手筋と実戦での応用を解説
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評価:C
対象者:10級〜二段
発売日:1994年1月

先日のC級2組順位戦で降級が決定し、フリークラス規定(年齢制限)により今期限りで引退となった大内延介九段。穴熊党の僕は「史上最強の穴熊」などで、随分の勉強をさせてもらいました。長い間お疲れ様でした。

本書は部分図(一部実戦形式)で基本的な寄せの手筋を学んだ後に、大内九段の実戦から次の一手形式で応用レベルの問題を見ていきます。

全237ページの3章構成。問題ページは上半分に盤面図が、そして下半分が局面の解説とヒントになっています。解答ページには盤面図が2〜3枚と正解・解説が掲載されています。目次は以下の通り。

  • 第1章 寄せの基本(第1問〜29問 しばり・必至)
  • 第2章 定跡の決め手(第30問〜61問 二枚落ち〜角落ち・平手)
  • 第3章 実戦の決め手(第62問〜93問 矢倉・振り飛車・穴熊)

第1章 第25問 寄せの基本より
ここでは▲2五桂と打ちます。△3二金と馬を外されても▲1三銀△2一玉に▲3三桂不成として、△同金(△3一玉は▲4一金)▲2二金で詰みとなります。
金の頭に桂馬を打って(あるいは跳ねる)、金の利きをずらして詰ます筋は頻出です。「金頭桂」という用語もあるくらいなので、知らなかった方は是非覚えておいてください。

第3章 実戦の決め手 第67問より 図は△6四同金まで
類書をお持ちの方は、玉の横にビシッと銀を打つ「腹銀」の手筋を勉強した記憶があるかと思います。そう、ここでの正解は▲5三銀です。以下△同玉▲4二角△6三玉に▲5二銀と再び手筋の一着が飛び出して決まります(△同玉は▲6四角成)。
それにしてもプロの将棋でこんなに大差になるのも珍しい。

タイトルは「寄せの決め手」なのに第2章の「定跡の決め手」というのが曲者です。駒落ち定跡での下手の攻め方や奇襲戦法「鬼殺し」の受け方を解説してあったりと、寄せとは全く関係ありません。内容の良し悪しは別として、関係のないテーマを丸々1章も用意するのはどうなんでしょうか?

この章に90ページも割かれているため、寄せの基本手筋を学ぶ第1章ではカバーし切れていない手筋が目立つのが残念です。だいたいこの手の本は、一冊あれば基本は一通りマスターできるようになっているのですが、本書は明らかにボリューム不足です。

一方、実戦編は「寄せ」とは関係のない「受け」の問題も登場するものの、「なるほど、プロの華麗な寄せも基本手筋を組み合わせることによって成り立っているんだな」と改めて実感させられる良問もいくつか登場するので勉強になりました。

普通の書店で見ることはまずないでしょうが、いかにもブックオフの105円均一に眠っていそうな表紙(そんな表紙あるのか?)ですので、見かけた方は立ち読みで挑戦してみてください。