飯野健二:攻める守る将棋駒の使い方ドリル

駒を効率よく使う方法が学べます
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評価:A
対象者:15級〜13級
発売日:2009年7月

本書は将棋のルールを覚えて間もない方、なかでも駒の「動かし方」はわかったけれども、各駒の特性を理解して「活用する方法」がイマイチわからない方を対象とした問題集です。著者はNHK杯将棋トーナメントの対局に白いスーツ(!)で登場したこともある棋界のダンディズム・飯野七段。

全286ページの3章構成(攻め・受け・寄せ&詰め将棋)で計280問の問題を掲載。各章とも歩・香・銀・金・角・飛・玉と駒別に問題がまとめられています。また、問題図は初心者の方でもわかりやすいように、部分図で出題されています。

飛車は逃げません

飛車を逃げる手は好機を逃すことになります。ここでは▲3三歩成と王手を掛けて、△同玉(あるいは同桂)に▲5四飛とすれば、ただで金が手に入ります。

飛車の横への働きを最大限に活かすため、3四の歩を王手で成り捨てるのがポイントでした。

銀は斜め後ろに利きます

桂馬を放置していると成られてしまいますが、▲1八飛には△3七桂成が、▲3八飛には△1七桂成があります。

一見すると困ったようですが、この2つの狙いを受ける▲2六銀が好手となります。銀は斜め後ろに利きますので、桂馬の攻めを受けるには相性のいい駒です。この形は「桂先の銀」と言い、矢倉戦で出番が多い受けの手筋です。

桂馬の特徴を活かす

8種類ある将棋の駒の中で、桂馬は「相手の駒を飛び越えて」動くことができるというユニークな特性を持っています。

この局面では、その特性を最大限に利用した▲3四桂が正解となります。角が玉を睨んでいるので、この桂を取ることができない点に注目。

桂馬の王手には「合い駒」が無効ですので、相手が駒を何枚持っていようとも関係ありません。角と桂のコンビで玉を攻める筋は実戦でもよく登場します。

香車をどこに打つか

1八の飛車を活用するために、持ち駒の香をどこに打つかがポイントとなります

ここでは、▲1九香が次に▲1二飛成の一手詰めを狙った鋭い一手となります。後手が△2一金などで1二の地点を受けようとしても、今度は▲1三飛成の詰みがあるので受け無しとなります。

香車を飛車の後ろから打つのがポイントで、▲1七香と飛車の頭に打つのは△4三金と金を取られて失敗です。

初心者の方は飛・角といった大駒を動かすことだけに考えがいきがちですが、歩や桂・香といった小駒も大駒にはない独特の働きを持っていますし、これらを上手に使わないと上達は望めません。

清原・ペタジーニ・江藤・広沢選手…ほか、他球団なら4番を張れる打者をフリーエージェントで獲りまくった一時期の巨人が思うように勝てなかったのと同じで、将棋も全ての駒を満遍なく適材適所に活用することが大切なのです。

本書では「垂れ歩」・「合わせの歩」・「連打の歩」をはじめ、香の「田楽刺し」・銀の「割り打ち」・「腹金」・桂の「ふんどし」・「両王手」など、その駒が持つポテンシャルを100%引き出すために欠かせない必修の手筋を効率的に学ぶことができます。

第三章は詰将棋も出題されています。問題はいずれも1手、または3手と短い手数のものばかりですが、ここでは基本的な詰めの形と共に、「駒をタダで捨てる」・「邪魔駒を消す」といった非常に重要なテクニックを学びます。

また、詰まない玉を王手、王手と無闇に追いかけずに、「必死(受け無し)」をかけるというコンセプトもこの章で合わせて登場します。

問題量も280題と豊富なため、反復練習にも最適。本書の内容一通りマスターしてしまえば、勝率が上がるだけでなく、将棋の面白さやその奥深さも合わせて実感できるはずです。

「将棋をはじめよう!」的な入門書を読んだ後に、「次は何を読もうかな?」と決めかねている方にはピッタリの一冊ではないでしょうか。出版社(池田書店)・表紙ともに地味ながら、なかなかの良書です。