初段の力(週将ブックス)

3択形式のため難易度は低めです
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評価:C
対象者:8級〜3級
発売日:2008年12月

「週刊将棋」の「段・級位認定 次の一手 初段クラス」に掲載された問題(2004年1月14日号〜2006年2月15日号)を「寄せの手筋」「凌ぎの手筋」「中盤の手筋」の3つのテーマに分類した問題集です。

タイトルは違えども「週刊将棋」に掲載された問題は定期的に単行本化されているので、既にシリーズを何冊かお持ちの方もいるかと思いますが、本書では解説ページに「解答図」のほかに、正解手に対する応手や変化手順を示した「参考図」も2枚掲載しており、視覚的にわかりやすくなっているのが特徴です。

全222ページの3章構成で、106問を出題。また問題図の下には候補手(3択)&応募者の正解率が記されています。目次は以下の通りです。

第1章 寄せの手筋(第1〜66問)
第2章 凌ぎの手筋(第67〜86問)
第3章 中盤の手筋(第87〜106問)

自玉の頓死筋に気をつけましょう

第1章 寄せの手筋 第8問より:図は△3一同金まで
候補手は@▲3三桂 A▲2一銀 B▲2一角の3つ。正解は…Bの▲2一角です。以下△同金に▲3三桂が3手一組の好手順となります。

▲3三桂に対して△3二金は▲2一銀の一手詰めですし、△2四銀とするのも、▲2一龍△1三玉▲1一龍に何を合駒しても▲同龍以下並べ詰みとなります。
Aの▲2一銀でも同じようですが、銀は前に利くので▲3三桂の際に△8七銀と打ち込まれてトン死してしまいます。

詰まない逃げ方は一つだけです

第2章 凌ぎの手筋 第76問より:図は△1五桂まで
候補手は@▲1六玉 A▲3七玉 B▲3八玉の3つ。正解は…Bの▲3八玉です。他の逃げ方は即詰みに討ち取られてしまいます。

@▲1六玉は以下△2七角▲2五玉△3五金▲同歩△3三桂▲3四玉△4五角成ですし、A▲3七玉も以下△2七金▲4八玉△5九角▲4九玉△5八銀▲同玉△6八角成から詰みとなります。

上級クラスの問題を収めた「上級者の力」から四・五段クラスの問題を収めた「四・五段の力」まで、同シリーズは5冊は刊行されています。本書は難易度は2番目に低いものですが、第1章の「寄せの手筋」では相手の玉だけではなく自玉の安全度も見極める必要(特定の駒を渡すと詰んでしまう)があり、従来の本に比べると求められる読みの力はやや増えた感じがします。

しかし、シリーズでは本書のみ候補手が3択で示されていますので、それを見てしまうと逆に今までの本よりも簡単かもしれません。視界にどうしても入ってしまうので、紙を用意して候補手を隠して問題を考えるのが正しい読み方ですね。

第2章の「凌ぎの手筋」は多くの方が苦手としていると思われる合駒選択の問題も登場しており、有段者クラスでも油断できません。個人的には合駒選択だけの問題集があってもいいと思っているのですが…

類書は既にたくさん出版されていますので、このタイプの本が自分に合っていると思われる方は従来の本と同様に中・終盤における「読みの力」を鍛える一助になると思います。

ひとつ上のクラスを目指す方は同シリーズの「二段の力」を参考にしてみてください。そちらは本書と違い、候補手は全く掲載されておらず自力で解くスタイルとなっています。