加藤一二三:次の一手最強の手筋−勝つ手は常に一つだ

九段の文章を見る限りゴーストライターは存在しない
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評価:C
対象者:10級〜3級
発売日:1984年1月

本書は相矢倉・対振り飛車(急戦のみ)・その他の戦法・駒落ち、の各戦法における定跡やその後の戦い方を、加藤一二三九段の実戦を交えつつ解説する次の一手形式の本です。

全238ページ、見開きに局面図が4枚(右ページにテーマ図が1枚、左ページに結果図1枚、参考図2枚)の全七章構成です。目次は以下のようになっています。

第一章 相矢倉の戦い 雀刺し・▲4六歩・4七銀・3七桂・2八飛型他
第二章 対中飛車の戦い  ▲3八飛戦法
第三章 対三間飛車の戦い ▲4五歩△同歩▲5五歩急戦
第四章 対四間飛車の戦い ▲二枚銀戦法・棒銀
第五章 対向かい飛車の戦い 対△3二金型向かい飛車
第六章 平手その他の戦法  相振り飛車・ひねり飛車
第七章 駒落ちにおける戦い 二枚落ち 他

第五章 対向かい飛車の戦いより:図は△4三銀まで

出版から20年経っていますので、当時は頻出の局面でも現在ではさっぱり見ないものや、定跡自体が古くなっているものもあります。

あくまでも「次の一手」が主体なので採り上げられているテーマも断片的で、難しい変化は省く構成となっており、系統立てて勉強したい人には物足りないと思います。

序章〜「司徒行録はパウロと行を共にした聖ルカが書いたものであるが、(中略)今回の聖地巡礼によってより一層…」や本編で「大山名人は△4三銀と指した。わたしはここで▲2四歩と突いた。すると大山名人は△同角と取ってきた。この手を私は全く読んでおらず長考に沈みそのまま休憩に入った。昼食は特上うな重と決めてある。」という加藤節(あくまでもケインの想像です)は残念ながら全く出てきませんので、この辺を期待すると少しがっかりするでしょう。

左ページに図面が詰まっていて、その間に解説を挟むという窮屈な構成ですので、上段は縦に6文字しか入りません。そのため▲7六歩とかの符号が行を跨ぎまくり、非常に読みにくい箇所が多々あります。

数多く刊行されている「特にこれといって売りのない」普通の次の一手本ですので、コレクター以外の方はあえて読む必要性は無いと思います。

それにしてもこの表紙の似顔絵、とても「堅気」の人には見えないんですが(笑)