田村康介:田村流けんか殺法

いいかげんにC級2組を脱出してくれ(笑)
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評価:D
対象者:5級以上
発売日:2004年11月

師匠(大内九段)譲りの早見え早指しで新人王を獲得、「10秒将棋なら誰にも負けない」と豪語する最後の無頼派・田村六段の自戦記形式の講座です。

堅気の人が読む本とは思えないようなタイトルですが、悪くなってから土俵を割らずにどうやって逆転にこぎつけるかをテーマに実戦譜を見ていきます。

全252ページの2章構成で、第1章は「週間将棋」に連載された同タイトルの講座と同じ内容となっています。目次は以下の通りです。

第1章 講座編
強気で押して勝機をつかめ―対屋敷伸之七段
開始直後にノックアウトチャンス―対木村一基七段
相手のパンチにパンチを合わせる―対野月浩貴五段
角換わり乱戦―対中原誠永世十段
早指し戦は序盤から強気で押せ―対堀口一史座五段
押されてもくよくよしない―鈴木大介六段 ほか

第2章 実戦編
挑発にのるけんか殺法 対郷田真隆六段
飛車を振らせて力戦に 対行方尚史五段
投げやり指しで開き直る 対伊藤果七段
気合いで決めた一局  対杉本昌隆五段

ここでは既に田村六段が形勢を損ねてます

第1章 ▲屋敷−△田村より:図は▲5四歩まで
図の局面で既に田村六段が不利な状況ですが、玉頭にと金を作られそうなこの局面で手抜く△7七銀成が田村六段の勝負手です。銀をどかして飛車成りを見せるとともに、▲同桂△7六歩となったときのあたりが強くなっています。
実戦は、△7七銀成▲同桂△7六歩▲5三歩成△7七歩成▲同角△8九飛成となりました。

目次からして内容を察することが出来ると思いますが、とにかく精神論が多いです。第1章の第1講ものっけから『将棋は戦いですから、究極的なことを言えば強気でなければ勝てません。受けるにしても「受けきってやる」という強気の姿勢がなければいけないのです。』と始まるわけですが、手順の解説は普通の自戦記とあまり変わりません。強いて言えば、田村六段が序盤から悪くなることが多すぎ(笑)

その締めも『強気が相手を間違わせることは実戦でもよくあることなので、皆さんも実戦では気合よく指してほしいと思います。』で終わっており、ほとんど講座になっていません。

読後感が非常に寂しく、「何を勉強したんだろうか」と思わせる内容です。