鈴木大介:攻める振り飛車 四間飛車穴熊&力戦振り飛車

雑誌掲載レベルの自戦記でもうひと工夫ほしい内容です
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評価:C
対象者:6級〜三段
発売日:2000年4月

本書は、鈴木大介八段が自ら選んだ10局(四間飛車穴熊・ゴキゲン中飛車・石田流)を、自戦記的に解説した内容となっています(おまけとして短いコラムが随所に挿入)。

223ページ、見開きに局面図が4枚の全2章構成です。

第一章『四間飛車穴熊』対銀冠・棒銀・居飛車▲8筋交換型・相穴熊他

第二章『力戦振り飛車』ゴキゲン中飛車(急戦・持久戦)・石田流(角道を止める形)

第58期順位戦C級1組 ▲岡崎△鈴木戦より:図は▲5七角まで
ここで鈴木八段は△8二銀と穴熊のハッチを閉めましたが、これは敗着にもなりかねない大悪手で、▲2四歩△同歩に▲2三歩とされて、次の▲2四角が受かりません。この自戦記はこの「うっかり」系が多いのですが、△7四歩から薄い桂頭にあやを求めました。「悪くなったら戦線拡大」というやつですね。

先手のこの手筋は一歩持ったら常に狙えますので、居飛車党の方は覚えておきましょう。また、「すぐに使える将棋の手筋 上巻」の52ページでもこの手筋と応用が解説されていますので、お持ちの方はご確認ください。

他の鈴木八段の著書と同様に難しい話は一切抜きに、ポイントを極力分かりやすく解説してあります。

以前にレビューした「振り飛車新世紀〜鈴木流四間穴熊」と同様に、『この手をうっかりした』・『気持ちのいい一手』・『オススメの一手』と得意の台詞がバンバン出てくる展開もそのまんまです(笑)

タイトル戦や『将棋世界』の自戦記に四間飛車穴熊が出てくることは少ないので、四間飛車穴熊党の方は振り穴特有のドロドロした粘り方・大駒を切るタイミング等のプロの考え方に触れられるいい機会だと思います(小林健二九段の『快勝!スーパー穴熊』・『スーパー穴熊〜完結編』もその点だけはよかった)。

ただ定跡本の巻末におけるオマケ的な自戦記ならともかく、まるまる一冊が自戦記の本書は、対局中の一手一手における心情変化や対局相手の『顔』がもう少し見えても良かったと思います。

変化手順以外は淡々と局面が進んでいくので、この形を採るならば、第一章を『定跡編』、第二章を『自戦記編』にした方が中途半端感がなくてよかったのではないでしょうか?

題材がいいだけにもう少し一工夫あれば、と少し残念な一冊です。本書を読むくらいなら、「NHK将棋講座」を単行本化した「鈴木大介の振り飛車自由自在」の方が解説が断然詳しく、掲載局数も多いのでオススメです。