森下卓:森下の四間飛車破り

四間飛車穴熊への手厚い銀冠は森下九段の棋風にぴったり
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評価:S
対象者:5級以上
発売日:1996年8月

森下九段のデビューから平成7年度までの対四間飛車戦の全80局を森下流のわかりやすく、丁寧な語り口で解説した実戦集です。

残念ながら既に絶版になっていますが、良い本なのでピックアップしてみました。
(追記:2002年には続編となる「森下の対振り飛車熱戦譜」が出版されています。)

図は▲森下△谷川戦(第37期王位リーグ)より

戦形は棒銀・4五歩早仕掛け・左美濃からの急戦・4枚美濃・居飛車穴熊・対四間飛車穴熊での銀冠と基本形は全ておさえられいます。

80局の内、森下九段の勝ちが8割台半ばと驚異の勝率ですが、特に対四間飛車穴熊での銀冠森下システムの手厚い指し方は参考になります。

分かりやすく言うと中原永世十段が連採していた▲8五歩〜▲8六角〜▲7七桂から押さえ込みを狙う形なのですが、森下九段もよほど自信があるのでしょう『(対四間飛車穴熊)の銀冠ほど私の棋風にあった戦法はない。手厚くさして押し切る形が多く、勝率も高い。私らしい将棋がさせているというこだろう』、『自分の将棋の中でも一番自信がある作戦である』と述べておられます。

構成は一局あたり8〜10ページを割いた自戦記編のものが12局(見開き6面)。他の68局が棋譜解説編(将棋年鑑や将棋世界のタカミチ実戦教室と同じタイプで見開き5面)となっています。

対谷川戦において華麗な手で勝ちを決めた項に『従来、こういう派手な手はなかったのだが、最近よくある。将棋が派手になったのだろうか、粗くなったのだろうか。(中略)毎年50勝していた頃はこんな手で勝つことはなかった。褒められた勝ち方ではないと思う。』、『初手▲7六歩に対する△3二金を評して、志が低いと発言した事があった。しかし棋士は神様ではないのだから、相手の手を見て手を変えるのは当たり前の事で、孫子の兵法にも載っている。最近になって、余計なこだわりが自分の将棋を狭くしてしまうことに気がついた。』と随所に森下節が出てきてますので、森下ファンも納得です。

ボリューム・解説のわかりやすさ・図面の多さとどれをとっても文句なし、特に手厚い形で押切り勝ちを狙いたい方に、オススメしたい一冊です。

地元の将棋祭りに来てくださった森下九段に、この本に『一手入魂』と一筆頂いたのですが、その際に『実に良い本ですねぇ。』と言ったら『あ、これ絶版になったんですよね(笑)。またこういうの書きます』とリップサービス(?)してくれました。期待してます!