福崎文吾:振り飛車穴熊の正体

形が古くて現在ではほとんど参考になりません
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評価:C
対象者:5級〜三段
発売日:1987年11月

十段(竜王戦の前身)時代の福崎八段が著した初の穴熊研究書です。四間穴熊はもちろん、三間、中飛車での穴熊も採りあげており、対居飛車急戦と持久戦における定跡と実践例を解説していきます。

全295ページの16章構成で見開きに盤面図が4枚配置されています。最終章の次の一手問題は120問もありますが、解説もなくただ解答が一手記してあるのみですので、あまり意味がありません。

銀冠+右四間飛車

第8章 四間穴熊VS右四間飛車より:図は▲6八金まで
▲3七桂を跳ばせない△3五歩には▲3六歩と反発し、以下△同歩▲3八飛△3二飛▲3六飛と進めて先手作戦勝ちとなってしまいます。そこで△4五歩と捌きに出ても▲5五銀が好手です(△同銀は▲同角△同角▲3二飛成と飛車を素抜かれます)。

対急戦の章は定跡解説の感じで、近年の穴熊解説の本でも見られるような斜め棒銀などの手順が比較的詳しく掲載されています。候補手がいくつかある場合でも、その手ごとに基本図を「再掲第〜図」のように掲載していますので、いちいちページを戻す必要がなくて古い棋書の割には親切な作りとなっています。

ただし、全ページにわたって振り飛車穴熊が後手なのに、局面図をひっくり返していないのが残念です。

対持久戦の章は一変して、実戦例をいくつか見ながら解説を進めて行きます。同じ局面図から「実践例1」を2ページ、「実践例2」を2ページといった具合です。

こちらは急戦の章と違って、1ページあたりに進む手数が20手くらいとやたらと多く、盤面図が2枚では全然足りませんので、実際に番に並べることが必要です。

古い穴熊の本の共通点として、対銀冠で左の金を△7二金としているということが挙げられるのですが、本書の場合もほとんどのページがその形になっており、▲8六角・7七桂の理想形から上部に厚みを築かれるのが不満です。

現在、対銀冠における四間穴熊側の主流は、△6四歩から左の金を6三に配置し上部からの厚みに対抗します。そして、戦況によって金を攻めに使ったり、7三金として自陣に引き締めてたりと、その柔軟性を生かします。

既に絶版になっていますので(出版元の木本書店のHPはいつ見ても改訂版作成中と出ます)、本書を見る機会は滅多にないでしょう。

著者の福崎八段は、同じく振り飛車穴熊全般を解説した「振り飛車穴熊戦法」も著していますが、そちらの方は比較的新しいものの、内容を詰め込みすぎて変化が浅すぎてオススメできません。

四間穴熊限定ですが、対居飛車急戦を勉強したい方は「四間飛車道場 第10巻 急戦vs穴熊」、対銀冠は「四間飛車道場 第8巻 銀冠vs穴熊」などを参考にすると良いでしょう。