三浦弘行:鉄壁!トーチカ戦法

ミレニアムや三浦囲いとも呼ばれています
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評価:B
対象者:8級〜二段
発売日:2003年10月

対左美濃に続いて対居飛車穴熊の「藤井システム」が猛威を振るい、対四間飛車における居飛車持久戦策が危機に瀕していた中、「不思議流」で知られる中村修八段が指し始めた戦法がトーチカ戦法です。囲いの呼び名は本書で統一している「トーチカ」以外にも「三浦囲い」や「ミレニアム」などがあります。

藤井システムの登場により、受け一方という不本意な展開を強いられていた居飛車党にとってこの囲いは福音となり、トーチカを連採して高勝率を誇った著者の三浦八段は「升田幸三賞」を受賞しました。発案者の中村八段可哀想すぎです(泣)。雑誌「将棋世界」のインタビューでも三浦八段は「中村さんに申し訳ない」とおっしゃっていました。

全223ページの2章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。また、巻末には参考棋譜として三浦八段の実戦譜が簡潔な注釈つきで計10局ほど収録されています。

第1章 ▲6六角型トーチカ
△6三金型、△5四銀型、△5二飛型
第2章 ▲6七金型トーチカ
△5四歩型銀冠、△5四銀型銀冠、△穴熊型

第1章 ▲6六角型トーチカより:図は△5四歩まで
ここまで組めれば居飛車作戦勝ちです。以下▲3五歩△同歩▲同飛△3四歩▲3六飛と浮き飛車に構える手順が解説されています。

出版当時の2003年はトーチカを解説した専門書は「四間飛車道場 第1巻 ミレニアム」しかなく、こちらは高度な定跡書といった内容になっています。一方、本書は居飛車党の方を対象に、トーチカの狙い筋と指し方はなるべくわかりやすく解説しており、枝葉に至る細かい手順などは掲載されていません。

また、四間飛車側が普通に囲いを進めてトーチカ側にガッチリと金銀4枚の集結を許していますので、全ての変化手順で「居飛車良し」となっています。

現在、四間飛車側の対策は早めに△5四銀から△6三銀のダイヤモンド美濃を作り上げて、△5四歩から△5五歩の仕掛けの筋を見せるのが有力とされています。居飛車側が右側の銀を引き付けようと▲5九銀と引いて、3七の桂馬が浮いた瞬間に△5五歩を狙うわけです(▲同歩は△同角でその桂馬にあたります)。

この辺の指し方は、本書が出たときには確立されていなかったので仕方ありませんが、年数を経た現在に読むとなると居飛車党も四間飛車党の方もちょっと残念に思うかもしれません。

本書以降、このトーチカ囲いに関する棋書は出版されていませんが、上記のダイヤモンド美濃から△5五歩を狙う指し方は、「NHK将棋講座」のテキストを書籍化した「鈴木大介の振り飛車自由自在」の中で、鈴木八段の実戦を元に解説されていますので、四間飛車党の方は参考にしてみてください。