久保利明:久保流四間飛車(下) 居飛穴粉砕!

居飛車穴熊が完成する前に攻め倒します
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評価:B
対象者:8級〜2段
発売日:1997年12月

新進気鋭(当時)の振り飛車党を執筆陣に迎えた『振り飛車新世紀』シリーズの第3弾は、美しい捌きでファンを魅了する久保利明八段の対居飛車穴熊の本です。

なおタイトルに(下)とありますが、上巻の「久保流四間飛車(上) 棒銀撃破!」は対居飛車棒銀がテーマとなっていますので、そちらががなくても本書は単独で読めます。

全223ページ、見開きに局面図が4枚で「定跡編」・「実戦編の」二部構成となっています。

第一部「定跡編」
第一章 ▲4八玉型急戦
第二章 居玉急戦
第三章 後手飛車先不突型
第四章 後手四間飛車での作戦

第二部「実戦編」
久保八段による実戦三局を自戦記風に解説(対日浦・藤井・小林宏)

本書が書かれたのは1997年ですが、対居飛車穴熊戦法として解説されているのは、現在でいう「藤井システム」に非常に似た形となっています。

居飛車側が穴熊に組む前、もしくは△1一玉とした不安定な形に対してモーションを起こすというコンセプトが、徐々に定着しはじめた頃でしょうか。

ただ、あくまでも発展途上の形であったためか、振り飛車の苦しい変化が多いです(この辺は正直に書いてあるので好感が持てます)。

例えば146ページから引用させてもらいますと『正直なところ私は、居飛車穴熊に対して急戦を仕掛ける指し方は、先手番でもかなり難しいと考えているのも事実である。したがって、振り飛車が後手番では、居玉急戦は不可能ではないか、と思っている。』とのことです。

そこで、後手四間飛車での作戦としては△4五歩〜△3五歩〜△3四飛と浮き飛車から石田流にする形とオーソドックスに銀冠に組む形が紹介されています。このあたりは、近年でも十分に通用する戦法ですので参考になります。

先に述べましたが、7年前の本ですので対居飛車穴熊の「藤井システム」を身につけたい方は、近年発行の他の棋書で勉強した方がいいと思います。

ただ、本書は俯瞰的に見るならば「藤井システム」完成前夜における四間飛車の試行錯誤がよくわかる一冊ともいえますので、この辺の流れを読み物として求めている方にはピッタリだと思います。

あと「絶版」の二文字を目にすると、何故か購買意欲がわいてくる棋書マニアの方も当然買いです(笑)。

なお、「振り飛車新世紀」シリーズの次作は「鈴木大介:鈴木流四間穴熊」となっています。