四間飛車道場 第9巻 持久戦vs穴熊

四枚美濃には位を取って対抗するのがベスト
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評価:B
対象者:5級〜六段
発売日:2003年2月

前巻「四間飛車道場 第8巻 銀冠vs穴熊」では、対四間飛車穴熊の代表的な持久戦策である銀冠における定跡手順が解説されていましたが、本書のテーマは四枚美濃、ミレニアム、そして8筋交換型(下の盤面図参照)です。

全221ページの4章構成。非常に細かい手順が枝葉に分かれて掲載されているので、盤面図が見開きに6枚配置されるなど、読みやすいように工夫されています。目次は以下の通りです。

第1章 持久戦vs穴熊の駒組み
第2章 四枚美濃(▲7九角に△6四歩、△4五歩、△2二飛の3テーマ)
第3章 8筋交換型(8筋交換型対△4三銀型、△6五歩早突きの2テーマ)
第4章 ミレニアム(6七金型ミレニアム、金銀密集型ミレニアム)

第3章 8筋交換型より:図は△5四歩まで

ネット将棋では四間飛車穴熊を中心に戦っている僕ですが、対四枚美濃というのは実戦経験も少ないためか、かなり苦労しています。対居飛車穴熊では△6二飛車と△5四銀によって、6筋を争点とすることが出来ますし、対銀冠では△4二飛と△4四銀の形から△5五歩の理想形からの仕掛け、また居飛車が序盤で▲6五歩と角交換を狙って来た場合は、△4四銀(交換拒否)▲6四歩△同金となり、やはり6筋に争点をつくることが出来ます。

しかし、対四枚美濃では右辺での駒のぶつかりはありませんので、積極的に動いてポイントを上げることが難しく感じます。また相手の玉は8七の地点のために角のラインからは外れていますし、堅さもこちらと同等です。なおかつ、こちらが手をこまねいていると4枚銀冠へと組み替えもできる伸展性も有しています。

自分の経験で言うと、早めに△6五歩を突いて4枚美濃の完成を牽制し、▲6六歩の反発を強要しておいて(そうしないと4枚に組めない)、△6五歩から6筋の位を取ることが有効な作戦のようです。

この後、△2二飛で2筋を受けておいて、△7三角と展開して角の睨みで相手の攻撃に備えます。本書でもこの△6五歩以下の手順がが詳しく解説されていますので、同じ症状でお悩みの方は参考にしてみてください。

第3章の8筋交換型は地下鉄飛車っぽい陣形ですが、8筋の歩を早めに交換して、その一歩を使って2筋から継ぎ歩攻めを狙っています。四間穴熊側がそれを受けた場合は、今度こそ地下鉄飛車から端を狙うというかなりしたたかな戦法(笑)。

この戦法は所司七段の独自研究なのか、やたらと先手(居飛車)よしの変化が出てきます。ただし、居飛車側の玉頭や桂頭が薄いので、カウンター狙いで五分に戦えると思います。

最終章のミレニアムは対四間穴熊ではお目にかかったことがないので、実用的なのは上記の2戦法だと思います。滅多に遭遇するものではありませんが、四間穴熊党なら目を通しておいても損はないでしょう。

なお、同シリーズ7巻から9巻(本書)までの持久戦テーマで取り上げられなかった、「5筋位取り」「玉頭位取り」の2戦法対する四間穴熊の攻防は、大内延介九段の名著「史上最強の穴熊 Vol.2 持久戦編」で紹介されていますので、古本屋などで見つけた(絶版です)方は参考にしてみてください。

四間穴熊に対する居飛車の急戦策は次巻の「四間飛車道場 第10巻 急戦vs穴熊」で詳しく解説されています。