米長邦雄:最強中飛車

表紙の名人の2文字が眩しい(笑)
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評価:C
対象者:8級〜初段
発売日:1994年4月

本書は1974年に出版され、1986年に新装版として再び出版された同タイトルの二度目のリニューアル刊行となる中飛車の定跡入門書です。

20年間で変更されたのは表紙のみ(笑)で、中身はそのまま、また盤面図の印刷のきめが粗くいかにも時代を感じさせる一冊となっています。

1994年の時点では、本書のテーマとなっているツノ銀中飛車は、既にあまり指されなくなっており、需要があったとは思えませんが、この年は著者の米長永世棋聖が49歳にして名人位を獲得したんですよね。ハッキリいうと発行元の日本将棋連盟が米長フィーバーに乗っかったということでしょう(笑)

全222ページの3章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。巻末の自戦譜は手順の解説がメインで、90年代に米長永世棋聖が「将棋世界」で連載していた「さわやか流自戦記」のような与太話や下ネタは皆無です。残念!

第1章 中飛車急戦法
第2章 中飛車本格戦法(ツノ銀中飛車、5筋位取り中飛車、△6四銀型中飛車
第3章 中飛車自戦譜(対加藤(一)九段 関根九段 内藤九段 有吉九段の計4局)

ツノ銀中飛車指すならこの一手は必修です

第2章 中飛車本格戦法より:図は▲3八飛まで
居飛車が3筋をねらってきたこのタイミングで△3一金と引くのがこの形での定跡です。▲3五歩△同歩▲同飛に△3二飛と展開できるのが金を引いた狙いで、以下▲3八飛なら△4五歩▲3三角成△同飛▲同飛成△同桂と進みますが、この大駒交換は打ち込みの隙が多い居飛車が不利です。また、▲3三角成に代えて▲6六歩と角交換を拒むのも△4六歩▲同銀直に△6六角と飛車の素抜きを狙われ、やはり居飛車が形勢を損ねます。

第1章で紹介されている、▲5八飛と振って、互いに居玉の状態から▲5五歩△同歩▲同角(次に▲3三角成の開き二重王手の一手詰みがある)△4二玉以下の狙い筋がわかりやすく解説されていたのは参考になりました。

第2章はツノ銀中飛車にほとんどのページが割かれていて、簡単な定跡手順とその狙い筋(△3二金と上がっているため、中飛車側から機を見て△4五歩と突いて角を捌く)を中心に見ていきます。

近年プロ・アマ問わずに大流行しているゴキゲン中飛車などの本の定跡は専門誌や棋書で勉強できますが、角道を止めるオーソドックスな中飛車の入門者は少ないのが現状です。

正直、この本は居飛車側の指す手が最善手ではなく、中飛車よしになる変化ばかりだったり、印刷のためか非常に文字が読みにくかったりするのですが、ほかに代わりとなるものがないので、勉強したい方はこれしか選択肢はないでしょう。

絶版となっていますが、大型書店などに行けばまだまだ普通に見つかります。対居飛車穴熊は全く掲載されていないので、対居飛車穴熊におけるツノ銀中飛車の狙いや新しい指し方は杉本七段の「中飛車戦法―居飛車穴熊を撃退する!」を参考にしてみてください。