棋神 中野英伴写真集

モノクロ写真が重厚感を醸し出しています
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評価:S
対象者:将棋ファン全て
発売日:2007年10月

雑誌「将棋世界」の巻頭で連載されている「勝負の刻」ってご存知ですか?生活とプライドの掛かった順位戦などで長考に沈むプロ棋士の鬼のような、あるときは憔悴しきった形相を重厚感あふれるモノクロ写真で紹介しているあのコーナーです。

あの写真を撮っている写真家・中野英伴氏が大山・升田、中原・米長、羽生・谷川そして渡辺竜王の世代までの計51人のプロ棋士の撮り、写真の合間に「聖の青春」で知られる作家の大崎善生氏がエッセーを添えるというまさに「将棋界の宝(米長会長)」と言える珠玉の写真集です。

将棋界を長年見続けた大崎氏だけあって、羽生さんの写真では『飛び散る脳波』という表現を使ったり、負けた側の清々しいまでの態度に美を見い出し、それこそが将棋界を長年支え続けてきたと、鋭い洞察がなされています。

絵的には「静」の筈なのに、感情がレンズ越しに伝わって「動」の世界になっているのは、流石だと思いました。大内九段は「英伴さんの写真の凄さは、背中で棋士の特徴を表現し、“心”の眼で棋士と対峙する。」とおっしゃっています。

将棋ファンにお薦めなのはもちろんのこと、将棋に理解がまるでない人にも何とかして見せたい一冊(笑)。

以下は、掲載棋士の一覧ですが、塚田八段と南九段を見るとA級在位時期とタイトル獲得時を知っているだけに「老け込むには早すぎる…もう一花咲かせてくれ」と思ったりもします。

僕のお気に入りは米長-南の王将戦における、雪景色が見える対局室で長考に沈む米長王将(当時)を後姿から映した写真です。森内名人の四段時代の写真もありますが、清原選手(オリックス)の若いころそっくりです(笑)

なお、後半の佐藤紳哉、木村一基、豊川孝弘、先崎学、中村亮介、阿久津主税は「勝負の刻」と同じ写真となっています。

登場プロ棋士
羽生善治、佐藤康光、森内俊之、郷田真隆、森下卓、屋敷伸之、島朗、丸山忠久、三浦弘行、鈴木大介、藤井猛、米長邦雄、中原誠、升田幸三、加藤一二三、谷川浩司、森けい二、大内延介、内藤國雄、桐山清澄、有吉道夫、二上達也、西村一義、勝浦修、高橋道雄、田中寅彦、南芳一、青野照市、中村修、塚田泰明、石田和雄、淡路仁茂、深浦康市、福崎文吾、村山聖、脇謙二、小林宏、日浦市郎、佐藤紳哉、久保利明、木村一基、中川大輔、富岡英作、豊川孝弘、先崎学、行方尚史、山崎隆之、中村亮介、阿久津主税、渡辺明、大山康晴 (写真集の中での掲載順です)