横歩取り道場(第1巻)8五飛阻止


この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:2002年7月

「東大将棋ブックス」シリーズの横歩取り編第1弾です。

最近は一時期程の横歩取りブーム?はなく、流行の座を奪われている感がありますが、本書が発行された頃は、後手番での勝率が6割を越えるという横歩取り△8五飛戦法が大威張りでした。

その対策の一つとして、相手に8五飛型に組ませない指し方が確立されました。それが本書で紹介される「8五飛阻止」の定跡の数々です。

全221ページで、従来の他シリーズ同様見開きに局面図が6枚、全7章で構成されています。

第一章 基本図までの駒組み
第二章 △5一金▲4八銀〜△8四飛型
第三章 △5一金▲3三角成〜▲5六飛型
第四章 △6二銀▲3三角成〜△8四飛型
第五章 △6二銀▲3三角成〜△8二飛型
第六章 △8四飛型
第七章 ひねり飛車型
以上の順で紹介されています。内容も従来と変わらず、変化を(基本的に)深くまで記しています。

しかし、あくまで変化を記しただけ、とも言えるのがこのシリーズ共通のお約束です。

もちろん手の解説は入っていますが、「〜は悪手で、以下〜の進行で後手苦戦となる」といった感じなので、本書は定跡書というよりは、(定跡)手順のカタログ集であると言った方が正しいでしょう。

また、参考棋譜や参考出典が一切書かれていないため、流行の移り変わりや局面に対する考え方の変移などが「全く」判らない点も個人的には大いに不満があるところです。

他の棋書(定跡書)では、例えば「これは○○五段が最初に指した為、○○新手と呼ばれている」「これは○○九段が考案した手順である」「これは▲○○−△○○戦の進行手順である」といったことが書かれている場合がほとんどです。

私の場合、「ふむふむ…その参考棋譜を並べてみるか」と進むことが多いのですが、本書は残念ながら、そのような勉強方法はできません。

本書は、その性格上「入門書」としてはオススメできませんが、もともとこの定跡を(ある程度以上)知っている人が、こういう変化もあるのか…と確認したり、他の定跡書を持っている人が、見比べながら知識の補完をしたりするための「辞書」としては良い本だと思います。

ただ、発売から二年が経過しているため、現在ではあまり見られない変化や新手の発見により結論が変わった変化がいくつかあります。その部分は、他の棋書などで補う必要があるでしょう。(投稿:ももさん 3級)