杉本昌隆:相振り革命3

流行の△3三角戦法が登場します
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評価:A
対象者:4級〜三段
発売日:2005年5月

本書は好評だった「相振り革命」「新相振り革命」のシリーズ続編となります。前2巻は文庫化されていますが、こちらは通常のサイズでの出版となっています。

第1巻が発売された当初は、相振り飛車の定跡は体系化されておらず、杉本七段をはじめごく少数の振り飛車党によって手探りの状態で進められていましたが、居飛車感覚と通じるものがあることから谷川九段をはじめトップクラスの居飛車党も指すようになり、この数年で急速にシステム化がなされました。

昔は相振り飛車と言ったら「金無双」が当たり前で、「美濃囲い」は損だと言われていましたが(本書にそういうくだりが紹介されていました)、ここでは美濃・矢倉・穴熊と最もよく指されている形にしぼって解説されています。

254ページ、見開きに局面図が4枚の全8章構成となっています。

第1章 現代相振りの考え方
第2章 速効矢倉崩し後手3三角戦法
第3章 端歩の考え方
第4章 後手3三角戦法対先手矢倉
第5章 先手中飛車対策
第6章 現代の相三間飛車
第7章 山崎流銀冠
第8章 相振り阻止作戦

第4章 後手3三角戦法対先手矢倉より:図1は△5四銀まで

第5章 先手中飛車対策:図2は△5六歩まで(便宜上戦後逆にしています)

構成は2005年の段階での最新定跡を半分と相振り飛車特有の指し方、その感覚の解説が半分といった感じです。第4章では、現在、当たり前のように指されている「後手番で△5五歩・5四銀と中央に位を張る」指し方が、相振り本では初めて多くのページを割いて解説されています。

またそれに合わせる形で、2筋不突きで△2四角・3三桂・4五銀の体制を築いて、飛車角銀桂で攻めるいわゆる「千葉新手」も紹介されています。

第5章の先手中飛車対策は、上の図2(便宜上戦後逆)にあるように、先手が囲いを省略して銀を繰り出し中央から速攻を仕掛けてくる形にどう対応するかが、詳しく解説されています。

ちなみに図2は漫然(ある意味自然ともいえます)と組んだ場合の例で、これは失敗です。このあと△1四歩から△1三角と増援され、5筋を厚く受けたら、今度は△2四歩〜2五歩〜2二飛車とされ「ド作戦負け」となります。

級位者あるいは有段者でも、この形でボコボコにされた経験のある方は多いと思いますが、対策を知らない人はこの章だけでも本書を読む価値はあります。

同じくこの戦型のスペシャリストである藤井九段による「相振り飛車を指しこなす本」シリーズが、現在のところ相振り飛車本の決定版とも言える出来になっていますが、そちらをまだ読んでいない方ならば、この相振り革命シリーズは是非読んでいただきたいと思います。

なおシリーズ続編の「相振り革命最先端」では、ゴキゲン中飛車の台頭により重要課題となった▲中飛車 VS △三間飛車・向かい飛車の持久戦、▲6七銀保留型向かい飛車などがテーマとなっています。