米長邦雄の本

最強の棋士と言われたら「四冠時代の米長」とは先崎八段の言葉
この本の詳細をAmazonで見る

評価:米長ファン必携
対象者:将棋ファン全般
発売日:2004年4月

平成3年 王将リーグより ▲米長△谷川:図は△6二角まで
鈴木輝彦七段が担当していた頃の「対局日誌」で以下の攻め手順を見たときは驚きました。▲2四角△同銀▲同飛△2三歩▲3四銀△2四歩▲2三歩△3一玉▲4三銀成△同金▲5二銀…以下難解な形勢も米長勝ち。

飛車取りの△2三歩に▲3四銀は矢倉の手筋本でも有名な手順ですが、あれは「角」を手持ちにしていますから、本譜とは駒の損得が違います。

谷川九段は同時期に米長永世棋聖の弟子の先崎八段にも似たような攻めで負けて、「将棋世界」の自戦記で「2局続けてこんな無理攻めにやられるとは…」という趣旨の感想を書いておられました。

平成15年12月12日の王将リーグの対郷田戦の公式戦を最後に現役を引退した米長永世棋聖の将棋人生を一冊に綴った本です。

巻頭では「負けたら引退するつもりで対局に臨んだ」第52期名人戦第4局 対羽生善治戦を『人生をかけた一局』と題してのベスト自戦記。

『思い出の一局』では谷川・中原・羽生が自ら選んだ対米長戦の熱戦譜を米長将棋、または人間としての魅力を交えて解説。

また中川・先崎・伊藤(能)の米長永世棋聖の弟子達が、内弟子時代の思い出を語る『弟子が語る米長邦雄』、佐藤康光棋聖による『米長邦雄の大分析』と読み物が非常に充実しています。

名人、米長邦雄のすべて(日本将棋連盟)」では、鳥取砂丘でのオールヌード写真を披露していましたが(笑)、今回は引退記念でもあり写真集のコーナーでも勝負師としてのベストショットがメインとなっています。

しかし流石は米長先生の本です。86ページの観戦記者の福本和生氏が語る永世棋聖との交友回顧録の中では『芸者さんが米長さんの前に来た時、茶目長さんは浴衣の前をパッと開く。パンツは着用していない』(笑)、93ページの「師との30年(伊藤能)」では永世棋聖の奥さんの詩吟を聞きおえた囲碁の藤沢先生が『素晴らしい。これじゃあ米長がいくら頑張っても、チンポコが飛び出て吹き飛んじゃうだろ』(笑)。いや〜伏字なしで凄い!

読み物だけではなく巻末の『米長邦雄名局名勝負』は大山・升田・森内・佐藤(康)・郷田ほか計14局を棋譜入りで解説してありますので、盤に並べて米長将棋を堪能したい人にもいいと思います。