勝又清和:つみのない話―投了後の逆転

トッププロでも詰みを逃すことはあります
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評価:C
対象者:5級前後の棋力があれば楽しめます
発売日:2000年2月

消えた戦法の謎」、「新手年鑑」、「最新戦法の話」などの著書において、棋士への取材力が好評を博している勝又五段の「終盤珍プレー・好プレー集」な一冊です。

詰みがあるのに気づかずに負けてしまった将棋、逆に詰みがないのに玉の逃げ方を誤り詰んでしまった将棋、秒読みに追われて飛び出した悪手などがテーマです。

全223ページ、1ページに問題図とその局面の直前の盤面図が掲載されており、次の1〜2ページで詰み(もしくは詰まし損ね)の手順を対局でのエピソードなどを交えて説明。

第1章 詰みのあった話
第2章 詰みのない話
第3章 秒読みのハプニング
第4章 名人戦の謎を探る
第5章 合駒はなに?
第6章 華麗な詰みと投了?
第7章 超難解!力試し編

この即詰みをあなたは解けますか?

第1章 詰みのあった話より ▲依田−△関(新人王戦):図は△3九とまで
図は後手が詰めろ逃れの詰めろをかけた…はずだったのだが、実はここで詰みがありました。手順は▲2三角△3一玉▲2二銀△同玉▲1二金△同香▲1一銀(!)△同玉▲1二角成△同玉▲2三金△1一玉▲1二香までぴったりです。

勝又五段の解説には「単純に金銀をを捨てまくって〜簡単に詰みだったのだ。プロの将棋でもこんなことがあるのである。」とありますが、全然「簡単な詰み」じゃないです(笑)

トップ棋士の中では逆転負けが多いひふみん

第3章 秒読みのハプニングより ▲加藤(一)−△大山(NHK杯):図は△6九銀まで
ここは先手の加藤一二三九段が勝勢で、▲5二と△同飛▲4三銀△8二飛▲同成銀で勝ちなのですが、我らがひふみんは何を思ったか▲8八金!!!!△同角成で▲同玉でも同角でも△8七金で詰みです。

トッププロの中では逆転負けの数が圧倒的に多い(1000敗記念のインタビューにおける本人談)加藤九段ですが、本局はそのなかでも傑作(?)の部類に入ります。

タイトル戦における局面の解説は勝又五段が控え室などで実際に見ていたと思われるので、エピソードなども臨場感に溢れていて読み物としても面白いのですが、その他の局面(特にトッププロ以外の将棋)では単に手順を掲載しただけで終わったりしていて、物足りないところが多々あります。もう少し、対局者の心理描写などがあってもよかったのではないかと思います。

詰め将棋の本として手にとる方はいいと思いますが、読み物として期待している方には残念な一冊でしょう。目のつけどころはいいと思いますが、練りこみが足りないのでC評価です。