月下の棋士

当時、氷室将介の格好を真似したDQNも道場で目撃しました
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長い間音信不通となっていた伝説の棋士『御神三吉』の推薦状を持って、将棋会館に現れた一人の青年。

彼の名は氷室将介。初手▲9六歩・対局中は立てひざ・スポーツキャップ着用・歯に衣着せぬ言動の彼が奨励会に入会(というか突撃)し、プロの頂点を目指すまでの様々なドラマを『哭きの竜』でお馴染みの能條純一が描く将棋漫画です。監修は河口俊彦六段。

【ケインの好きなシーン】

A級順位戦 大原巌 vs 刈田幸三(下記参照)の記録係を勤める氷室。局面は序盤の駒組み段階なのだが、氷室の手はスラスラと記録用紙を埋めていく。

何をしているか?と聞くと、二人の昼食休憩までの指し手を(予想して)書いているって言うんですよ!『これがテメェらの指し手だ!』って(笑)

【メインキャラ紹介】

大原巌
間違いなく大山康晴十五世名人。プラスアルファで中原誠永世十段的な要素もあるとのこと。漫画内ではかなりの古狸として描かれています。

タイトル戦の最中、会場である旅館の滝がうるさいから止めさせようとするエピソードが出てきますが、これは加藤一二三九段が元ネタだったと思います。

他にも実際にあった棋界の出来事をちりばめられていますので、棋界通の方はそのへんを見つけるだけでも楽しく読めます。

刈田升三
風貌、名前からしてそのまんま(笑)勝負のゲンを担ぐために、かあちゃん(嫁さん)の陰毛を食べるシーンもあった。

滝川幸次
谷川棋王の出身校が滝川高校だと知って命名したかはどうか定かではないが、まあ間違いないでしょう。漫画内では、かなり陰のあるダーク系キャラに仕上がっています。

『地獄からの死者』村森聖
「親御さんは元気ですか?(中略)・・・ということは、あなたが将棋をさせなくなる不幸に陥っても、悲しむ人はいないということですね?」と不気味なフレーズで登場したスキンヘッド棋士。対局中に吐血するシーンと名前から判断するに森けい二九段と故・村山聖八段がモデルでしょう。

サッカー、バスケットなどのスポーツ漫画と違って将棋の場合は、どうしても絵が静的になりやすいし、フィールドも狭い・・・とかなり難しそうなテーマだと思ったのですが、それぞれのキャラが背負う『ドラマ性』がストーリーに深みを加えており、読み応えがありました。

将棋を全く知らない人も問題なく読めるので、是非一度。ちなみに、2000年にテレビ朝日で主演:森田剛というキャストでドラマ化されています。(内容は言わずもがなです・・・故・真部贈九段も駒の持ち方に苦言を呈していました。)

2004年の復刊バージョンでは、表紙を実在プロ棋士の写真に前面差し替えが行われました。