佐藤康光:康光流現代矢倉 Vol.2 森下システム

天敵であるスズメ刺しも5局収録されています
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:1997年7月

シリーズ第2弾のテーマは「森下システム」です。先手番の戦法でありながら、後手の出方を見てから形を決める「後出しジャンケン」的な選択が可能なバランスの取れた戦法です。

天敵である「スズメ刺し」の影響もあり、本書が出版された1997年の段階では既に森下システムは下火になっていましたが、数年の雌伏の時を経て、近年再び表舞台に登場するようになってきています。

復活のきっかけとなった対スズメ刺し「深浦流」が登場した一局は、奇しくも▲深浦△佐藤戦(1997年の王位リーグ)だったために、本書の収録にも滑り込みで間にあっています。

全223ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。巻末には講座の元となっている佐藤棋聖の実戦譜が全20局分掲載されています(ただし、注釈などはついていません)。

第1章 △6四角-5三銀型(7局)
第2章 △6四角-7三銀型(3局)
第3章 △9五歩型(5局) 第4章 △9三香-9二飛型(5局)

▲8八玉は攻撃に自ら近づくので危険

第38期王位リーグ(紅組)▲深浦△佐藤より:図は△9二飛まで
△4三金と5筋に備えていない後手陣の薄みを突く▲5五歩がいわゆる「深浦新手」で、スズメ刺しからの攻めが来る前に仕掛けます。以下、△5五同歩▲同銀△9六歩▲同歩△同香▲同香△同飛に▲5三歩が狙いの一手です。△5三同銀は角筋が遮断されますので、▲9七香で飛車が死にます。△5三同角には当然▲5四香です。

△9六歩に代えて△7三桂と、もう一手力を貯めるのが半年後に佐藤棋聖が出した新手で、ここで先手の指し手が難しいとされています。この辺りのやりとりは、深浦王位の「これが最前線だ!−最新定跡完全ガイド」のP119〜、「最前線物語2」のP206〜で詳しく解説されていますので、お持ちの方はご確認ください。

解説は相変わらずやや高度ですが、窮屈感は前巻ほどではありませんので、森下システムを一通り勉強したい方は読んでおいて損は無いでしょう。森下システムを語る上では欠かせない「スズメ刺し」の講座も5局分ありますので、ボリューム的にも不満はありません。

ただし、10年近く前の本ですので、当時は最新でも現在では現れない手順(△6四角・5三銀型に対して左金を▲5六金〜6五金として後手の角をいじめる)などにも多くのページが割かれていいます。その辺は一度本屋さんで確認しておいた方が良いでしょう。

シリーズ最終巻となる「康光流現代矢倉 Vol.3 急戦」では、米長流急戦矢倉や塚田流△6二飛戦法、郷田流△5五歩交換作戦などが解説されています。