中村修:現代矢倉の基礎知識(上巻)

▲3七銀戦法を解説しています
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:1994年3月

中村修八段が中級者から有段者を対象に矢倉の定跡を解説した本で、同じくMYCOMから刊行された「矢倉ガイド」の最新版といった内容になっています。

テーマとなっているのは▲3七銀戦法で、「羽生の頭脳 5巻 最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法」と出版時期が近いので、同じ局面図が多く登場します。

全217ページの2章構成で、見開きに盤面が4枚配置されています。目次は以下の通りです。

第1章 3七銀戦法
第1部 第一基本図まで
第2部 第二基本図まで
第3部 7三銀型
第4部 7五歩型
第5部 5三銀型
第6部 9四歩型
第7部 最新の攻防

第2章 3七銀早上がり
第1部 6四角型
第2部 4三金右型

後手最善の△4五歩

第2章 3七銀早上がり 4三金右型より:図は△4五歩まで
▲3五歩に対して、素直に歩交換を許す△同歩は先手十分なので、代わりに△4五歩(最善手)と突いた場面です。以下▲3四歩△同金▲4八飛△4四銀▲4六歩△同歩▲同銀△4五歩▲3五歩△4六歩▲同角で先手良しとなります。

▲3四歩を△同銀は▲3五歩で銀が死ぬように見えるので、△同金と取りたくなるところですが、ここでは疑問手となります。上の手順中、△4五歩に対する▲3五歩が好手。そして△4六歩に▲同角(飛車取り)が決め手となります。この手で▲3四歩と先に銀をとるのは△4七銀と打たれて怪しくなります。

初級者向けのタイトルが付けられていますが、中身はかなり本格的で「羽生の頭脳」に枝葉の変化を肉付けしたような感じになっています。

盤面図は見開きに4枚ですが、1ページにつき2枚×2ではなく、各ページの右側が基本図が1枚と変化手順・解説が掲載されており、左のページには解説の続きと、変化手順における参考図が3枚というスタイルになっています。

また右のページには大きな太字で『△5三銀に▲4六銀は損な手』のような見出しがついており、その下には「ポイント」と題して『▲1五歩には△9四歩と待つ手が普通だ。▲4六銀は△4五歩と疲れて面白くない』…と、これから解説していく内容のダイジェストが掲載されています。

つまり、ページをめくるごとに大きなテーマ図(参考図)とそのポイント、ダイジェストが登場しますので、複雑な定跡もその都度立ち止まり、要点を整理しながら読み進めることが出来ます。

同時期に出版された「羽生の頭脳」に隠れて目立たないですが、なかなかの良書です。シリーズ次作となる「現代矢倉の基礎知識(下巻)」では森下システムを解説しています。