森下卓:現代矢倉の闘い

▲4六銀戦法を中心に解説しています
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評価:S
対象者:5級〜四段
発売日:1999年8月

シリーズ前作の「現代矢倉の思想」では▲3七銀戦法を中心に見ていきましたが、本書のテーマとなっているのは▲4六銀戦法です。

第1章 ▲4六銀の発見
第2章 現代矢倉の攻防
第3章 最強の森内流
第4章 5八飛戦法
第5章 進化する森内流

最強の森内流

第3章より:図は▲9九玉まで
△8五桂▲8八銀△4二銀▲2五桂△6四角▲6五歩に△5三角が端に狙いをつける好着想で、先手は駒が渡せないので攻めにも出られません。

▲4六銀戦法の章の流れとしては、▲4六銀に対する△4五歩の反発手順→後手良しの変化は現れず、▲3七桂の理想形を許すこととなる→△5三銀・7三角で迎え撃つ→▲2五桂の仕掛けは無理→矢倉穴熊の出現→△4二銀と一足先に受ける「郷田流」で互角の戦いへ…となっています。

そして、この後に本シリーズの目玉となっている「森内流」が満を持して登場してきます。森内流とは、前巻のレビューでも触れたので重複しますが、飛車先を△8四歩で保留し、△9四歩と端歩を優先し、△9三桂〜8五桂の活用を図るのが最大の特徴で、通常は△7三角の形になると活用に困る桂馬もこの森内流ならすぐに端桂から△8五桂の反撃をとることが出来ます。

先手としては▲9八香から穴熊へ潜ると潰されます。しかし、同じく▲9八香として△9三桂を誘っておいてから、穴熊に潜らずに▲2五桂と仕掛けるのが新対策で、この辺の難解な攻防も詳しく解説されています。

第4章の▲5八飛戦法というのは90年代前半に流行した指し方で、▲3八飛とする前に▲5八飛として、5筋の歩交換を許すまいと△6四銀とされたら、そこで▲3八飛とする指し方のことです。

この局面で△5三銀と手を戻したら、先手は都合0(ゼロ)手で▲3八飛を実現できたことになります。後手の有力対策としては、矢倉穴熊対策として登場した森内流がここにも登場し、いよいよ矢倉定跡を塗り替えるところまで来たという感じです。

ちなみにこの章では、森下九段が『将棋400年の歴史の中でも五指に入る』と評する妙手が飛び出します。

巻末には「エピローグ 矢倉はどこへ行くのか」と題して、矢倉に問われる総合力、形勢判断の難しさ、森内流の登場によって訪れた先手受難の時代、矢倉を指すコツ・見る眼などについて森下九段が思うところを述べておられます。

テーマとなっている戦法以外は前巻と全く同じ構成ですので、付け加える点は特にありませんが、現在の▲4六銀戦法には▲6五歩と突く「宮田新手」が登場して、定跡も大きな変化を見せています。

本書には掲載されていませんが、深浦王位の「最前線物語2」のP200、勝又六段の「最新戦法の話」のP45にこの手をめぐる最新の攻防が掲載されていますので、お持ちの方はそちらを参考にしてみてください。、

本シリーズで現代矢倉の基本定跡をマスターすることができたならば、森下九段の矢倉自戦記集「森下の矢倉」で、その手厚い指しまわしを実際に将棋盤に並べて勉強してみるのもよいでしょう。