羽生善治の戦いの絶対感覚

プロ棋士でも参考になると思われます
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評価:A
対象者:三段以上
発売日:2000年11月

トッププロの実戦譜から、序・中・終盤に置ける課題局面をそれぞれにテーマを設けて出題し、候補手の是非・局面の考え方・最善手へのプロセスを解説する『戦いの絶対感覚』シリーズ。

本書は羽生善治王位が、自らの実戦から43にわたる局面をピックアップしています。

構成は、問題図の下に簡単な形勢判断・指し方の指針が載せられており、翌ページに見開きで局面図が4枚&解説(3〜5ページ)となっています。全253ページ。(この構成は今日現在4冊刊行されている『戦いの絶対感覚』シリーズに共通しています)

第一章 序盤の絶対感覚
第二章 中盤の絶対感覚
第三章 終盤の絶対感覚
巻末にテーマとなった参考棋譜が38局分掲載。

羽生さんの華麗な差し回しに注目

▲羽生△丸山 新人王戦記念対局より:図は△6四銀まで
▲6五歩△同銀▲2六飛から銀を捕獲しに行く手順が見えますが、以下△8五歩▲6六歩△8六歩▲6五歩△8七歩成▲5九角△8八歩と進み、銀得でもと金の存在が大きく、桂香を拾われそうな展開から先手不利になります。

そこで上図からは▲6五歩△同銀▲9六飛車と8筋に飛車の横利きを残すのが面白手順です。ここで△8五歩なら▲6六歩△8六歩に▲同飛△同飛▲同角で銀取りが残って先手よしとなります。

テーマ図として採り上げられている戦形は、相矢倉・△8五飛車戦法・対抗形(急戦・持久戦)とバラエティに富んでいるので、居飛車・振り飛車党を問わずにとっつきやすいですが、非常に難易度が高いです。

例えばテーマ38−「玉頭戦の攻防」には『読みきるのは大変で、実戦で私(羽生王位)はここで間違えてしまい、負けてしまった』とあります(笑)。

「創作次の一手」などは、狙い筋が明確でその一手によって勝ち負けがはっきりわかるようになっていますが、本シリーズはトッププロの実戦を基に「この局面・形勢をどのように判断して、いかなる方針の基に読みを進めていくか」を勉強する本ですので、非常に細かく・地味な手順が多いです。

相手の指したい手を消すなどの高度な手も要求されるので、読み進める際には盤・駒を用意して実際に並べたほうが良いでしょう。

なお、この本が気に入った方は、ある局面図をテーマに羽生・佐藤・森内のトップ棋士がどう考えて次の手を選ぶかをインタビューしてまとめた「読みの技法」も参考になると思います。

次巻の「谷川浩司の戦いの絶対感覚」でこのシリーズは完結となります。