米長の将棋 6巻 奇襲戦法

プロの実戦にも現れた角頭歩戦法も解説
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評価:A
対象者:5級〜三段
発売日:2004年6月

シリーズ最終巻は奇襲戦法がテーマです。一口に奇襲といっても角頭歩戦法(▲7六歩△3四歩に▲8六歩)から、矢倉中飛車や袖飛車のように本格的なものまでさまざまです。

損得勘定を抜きにして、勢いだけで未知の領域に踏み込んだプロの戦いは、勝負に辛い現代将棋とは異なり見ていて楽しく、また、定跡から大きく外れた形を米長九段の「豪腕」がどうやってまとめていくのかが勉強になります。

297ページ、見開きに局面図が4枚の全6章構成となっています。テーマとなっている戦法は以下の通りです。

第一章 角頭歩突き
第二章 筋違い角、袖飛車
第三章 矢倉中飛車
第四章 桂ハネ戦法
第五章 急戦相掛かり
第六章 角頭襲撃ほか

第二章 筋違い角、袖飛車 ▲米長邦雄 △大内延介:図は△7六歩まで
▲8六銀△同銀▲同歩△7五銀▲8七銀。7筋以外に駒のぶつかる場所がないので、手厚く▲8七銀と埋めておいて、流れを落ち着かせる。

米長九段がポイントとしてあげるのは最初の▲8六銀。△7六歩と打たれて反射的に▲6八銀と引いてしまうようではいけない。▲6八銀には△8四歩と突く手が好手で、次に△8五歩から△8二飛から8筋に狙いをつけられると、先手の金銀が全く受けに利いておらず「ド作戦負け」に陥ります。

▲8七銀以下は▲6八金〜5七銀〜6五歩〜6六銀と自然に玉頭へ厚みを築いて優勢となります。袖飛車にはこのように玉頭を手厚く構えるのが急所となります。

なお▲8六銀以下の手順はこの実戦以降、袖飛車に対する代表的な受けの手筋となっており、受けの手筋に関する本にもしばしば登場しているので、図を見て「お!どっかで見たぞ」とピンと来た方はかなりの棋書マニアといっても過言ではありません(笑)