米長の将棋 3巻 矢倉戦法

将棋の純文学と言われるこの戦法における大局観を解説
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2004年3月

シリーズ1・2巻は居飛車対振り飛車の対抗形をテーマにしていましたが、本書では矢倉戦法における勝負術を自戦記形式で解説していきます。

文庫での出版は2004年ですが、これは1980年に出版された同タイトルのシリーズを復刊したものです。1980年代といえば、まさしく「矢倉は将棋の純文学」と言われた時代だと思います。掲載されている棋譜もタイトル戦でしのぎを削った加藤一二三、中原誠が中心となっています。

「弘法は筆を選ばず、小生は戦形を選ばず」というのは米長会長本人の言葉ですが(笑)、一番得意としていたのはこの矢倉戦法でしょう。

297ページ、見開きに局面図が4枚の全6章構成です。

第1章 雀刺しの強襲
第2章 雀刺し対2二銀型
第3章 雀刺し超急戦と四手角
第4章 3七桂1五歩型
第5章 3七銀戦法
第6章 その他の戦法

第二章 勝ちを決めるより ▲米長邦雄 △宮坂幸雄:図は△7三桂まで
▲1三桂成△同銀▲1四歩△同銀▲同香△同香▲同飛△1一香▲1三歩△同香▲同角成△同系▲3五歩と、この形の定番とも言える仕掛け

上の続きですが以下の後手の手順と解説が参考になります:△8六歩▲同銀△8八歩▲同玉△94桂▲3四歩△8六桂▲同歩△95銀

解説『8六歩は、銀と飛車を働かそうという手で、おそらくこの局面で最善だろう。私の8六同銀に8八歩と叩かれた。厳しい手で、私の玉を吊り上げて当たりをつけようと言う手だ。そして9四桂と玉頭に集中砲火を浴びせようというのだ。』

玉の囲いは金銀三枚、攻めは飛車角銀桂(ときには香車も)という将棋のセオリー、そして激しい寄せ合いによるスピード勝負など、矢倉には将棋のエッセンスを学ぶには最適な戦法と言えます。

ただし、本書は矢倉戦法の中の「雀刺し」にかなりのページ数を割いているので、中盤の駆け引きや玉頭におけるねじりあいなど矢倉特有の戦いがあまりみられないのが少し残念です。

そのへんが1・2巻に比べると若干見劣りするので、B評価としました。ただし、文庫版は安いので居飛車党の方は持っていて損はないですよ。

次巻の「米長の将棋 4巻 ひねり飛車・横歩取り」では、ひねり飛車と横歩取りにおける戦いをみていきます。