武市三郎:武市流力戦筋違い角の極意

将棋倶楽部24では人気の戦法です
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評価:B
対象者:8級〜二段
発売日:2003年5月

オンライン対局場のメッカ「将棋倶楽部24」では根強い人気を誇っている筋違い角戦法。ご存じない方のために簡単な手順を説明しますと、▲7六歩△3四歩▲2二角成と手損を承知でいきなり角交換を挑み、△同銀に▲4五角と打って3四の歩を掠め取ります(後手が5三の地点を受けなければ、当然▲5三角成があります)。
「将棋倶楽部24」では挑発の意味合いもあって▲2二角「不成」とするのが、定跡のようですね(笑)。

本書は筋違い角戦法を使い手とする唯一のプロ棋士、武市六段による解説書です。この戦法を掲載している棋書はオムニバス系の奇襲本を含めて数冊ありますが、丸々一冊を使って採り上げているのは本書だけです。

全220ページの5章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。

第1章 △5五歩型 ▲6七角型・三間飛車転換型・向飛車型
第2章 歩越し△5四銀型
先手高美濃型・△4五歩位取り-△2二玉型・△4五歩位取り-△4四銀型
第3章 相筋違い角型
△5五歩位取り型・後手左銀繰り出し型・△4五歩位取り型
第4章 その他の型
歩を取らない筋違い角・△筋違い角・△6二飛〜△4二飛型
第5章 実戦編 自戦記(対先崎八段、加藤九段、豊川六段ほか計6局)

第2章 歩越し△5四銀型より:図は△6三金まで
角の転換ができない分、▲4六歩〜▲4七金の高美濃が好形となります。△4五歩位取りでなければ、玉頭の2三や3四の地点に終始角の睨みが利いてきます。

筋違い角に対して、後手も△6五角とする「相筋違い角」も第三章で詳しく見ていきます。序盤早々、一歩だけのために角を手放してくれているので、後手としては不満はありませんが「売られたけんかは買うぜ!」という方にはこちらがぴったりかもしれません。

プロの間では筋違い角に対しては△5四銀の腰掛銀から4五の位を取るのが最も有効とされているようで、雑誌「将棋世界」では羽生さんの考案した形として、△5四銀の腰掛銀から△4三金と上がり、居玉の状態で△2二飛車と相振り飛車にする指し方が紹介されていました。

この形は本書では触れられていないのですが、わざわざ3四の地点が傷になっている左辺に玉を囲う従来の作戦より、こちらの方が理にかなっている感じがします。

奇襲(と僕は思う)系の中では人気のある戦法ですが、受ける方の作戦はネット将棋を見る限り千差万別のようです。力戦ですのでこの本で紹介されているような展開が中盤まで続くかはわかりませんが、他に詳しい棋書がほとんどないので本格的に勉強するなら本書しかありません。

受ける方は「なんだ筋違い角かよ」と馬鹿にしたり、挑発されたと思ってノータイムでバシバシ指してくるケースも少なくないと思うので、これをメイン戦法とするつもりでしっかりと勉強すれば勝ち星もついてくるでしょう。