小林健二:振り飛車奇襲戦法2 坂田流向かい飛車・袖飛車・相振り奇襲

振袖飛車は侮れない作戦で、受け方を覚えましょう
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評価:B
対象者:8級〜2級
発売日:2002年7月

前巻「振り飛車奇襲戦法1 石田流・奇襲中飛車・立石流」に引き続き、振り飛車の奇襲戦法を小林健二九段が解説しています。結論から言うと前作よりはかなり使える内容になっています。

全206ページで見開きに盤面図が4枚という構成です。テーマとなっているのは以下の戦法です。

第1章 阪田流向かい飛車
第2章 奇襲袖飛車
第3章 相振り奇襲
各章の最後に復習問題を掲載

坂田流向かい飛車

第1章 阪田流向かい飛車:図1は△2二飛まで
筋違い角+坂田流の変化です。以下▲7七銀には△5四角と2筋に睨みを利かせておいて、次に△2四歩からの逆襲を狙います。

袖飛車穴熊戦法

第2章 奇襲袖飛車より:図2は△5三銀まで
袖飛車穴熊の変化です。一見異様な形ですが、▲2八玉から▲1八香以下穴熊へと潜り込み、頃合を見計らって▲4六銀から玉頭に狙いをつけます。

相振り奇襲

第3章 相振り奇襲より:図3は▲6五桂まで
以下△6二玉▲7四歩△8二銀▲5五角△7二金▲7三歩成と一気に畳み掛けます。

前巻に比べてようやく奇襲臭さが出てきた感じがします。実戦経験があるからかもしれませんが、個人的には第2章の振袖飛車穴熊(図2)が相当使えると思います。四間穴熊に対する居飛車急戦では、左辺に攻め駒を引き付けておき、機を見て▲3八飛車から▲3五歩と玉頭にカウンターを仕掛ける常套手段が存在します。この振袖飛車穴熊は最初から決め打ち的に玉頭を狙おうというものです。

早めの▲3八飛で相手の居飛車穴熊を牽制できると言う利点もあります。10年位前の「将棋世界」誌の連載で、鈴木八段がこの振袖飛車穴熊の講座を書いていたので、既にレパートリーの一つに加えている方もおられるかもしれません。

なお、穴熊にしない普通の袖飛車戦法も載っていますが、後手の受け方がこちらの都合のいいようになっています(笑)。この戦法の受け方のコツは以前レビューした「米長の将棋 6巻 奇襲戦法」のページで盤面図を載せて紹介しているので、参考にしてみてください。

相振り奇襲(図3)の形は、皆さんも一回はやられた記憶があるのではないでしょうか?図3になってしまえば、どうやっても先手の攻めは続きます。本書には受け方が全く書いてありませんが、結論から言うと後手の△7三歩と打つのが早過ぎるのです。

△7三歩の代わりに△2二飛車と回り、▲7七桂には△5四銀として▲6五桂を防げばよいのです。これは大事な手ですので、是非覚えて帰ってください(笑)。
ここで紹介した受け方は「相振り革命 相振り飛車の極意」で解説されています。

このように各戦法とも受け方には全く触れられていないのが欠点ですが、どの戦法も即効性があり、手順もそこそこ詳しく解説されているので、前巻よりは読める内容になっています。