小林健二:振り飛車奇襲戦法1 石田流・奇襲中飛車・立石流

システマチックに勝ちたいなら立石流がオススメ
この本の詳細をAmazonで見る

評価:C
対象者:8級〜2級
発売日:2001年10月

振り飛車の奇襲戦法の中から、序盤から主導権を握れて、かつ相手の玉の囲いが完成する前に仕掛けることできる三戦法を小林健二九段が解説しています。

全230ページで見開きに盤面図が4枚という構成です。テーマとなっているのは以下の戦法です。

第1章 石田流(急戦石田流、升田式石田流)
第2章 奇襲中飛車(中飛車ヒラメ戦法、力戦型中飛車戦法)
第3章 立石流
各章の最後に復習問題を掲載

石田流

第1章 石田流より:図1は▲7七角まで
以下△8二飛▲3三角成△同銀▲6五角が好手。▲8三歩と飛車の頭にフタをする手を見せながら、△7二金を強要し、▲8七角と目障りだった歩をかすめ取ります。

中飛車ヒラメ戦法

第2章 奇襲中飛車より:図2は▲7七桂まで
以下△8八角▲5五歩△同歩▲同飛△4四銀(△9九角成は▲7一角がある)▲8五飛△8四歩▲7一角と進めます。

立石流

第3章 立石流より:図3は▲6六飛まで
以下△4三銀に飛車うちに強い陣形を武器に▲8六飛とぶつけて△8五歩を打たせます。そして▲7六飛△4二金▲6八銀として、理想形の▲7七桂と▲6七銀から5八銀への組み換えによる美濃囲いの完成を目指します。

上記の目次を見て「ん?」と思われた方も多いかと思いますが、ヒラメ戦法はともかくとして、石田流や立石流は奇襲戦法というには抵抗がある本格的な戦法です。立石流は升田幸三賞を受賞していますし、小林九段もこの戦法を連採してテレビ棋戦「第28回早指し選手権」で優勝しています(決勝の相手は谷川浩司九段)。

「奇襲」というタイトルを見て本書を手に取る方は、狙いがわかりやすく即使える戦形を期待していることと思いますが、図1の石田流(升田式石田流)なんかを見ると、もはや定跡書と変わりありません。

かと思えば、他のページでは基本的な部分を省略していたりと、どの読者層を想定しているかよくわからない作りになっています。この一冊で三戦法が使えるとは言い難く、どれかに絞って(立石流は人気戦法にもかかわらず専門書がありません)出版したほうがよかったのではないかと思います。

奇襲の本は数少ないですが、冒頭で述べましたように、石田流と立石流は「奇襲」と範疇を超えて本格的な戦法として認知されています。なかでも石田流はさまざまな棋力の方を対象とした定跡書が出版されていますので、そちらで勉強したほうが有段者になっても十分に使える戦い方が習得できるでしょう。

なお、本書には続編の振り飛車奇襲戦法2 坂田流向かい飛車・奇襲袖飛車・相振り奇襲も出版されており、そちらの方はなかなかの内容となっています。