小林健二:実戦!スーパー四間飛車

普通の自戦記ですが立石流の棋譜(4局)が貴重
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評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:1997年2月

スーパー四間飛車 急戦!居飛穴破り」「撃破!居飛車急戦」が定跡を交えた講座だったのに対し、本書は小林九段の実戦を元に、四間飛車の指し回しを勉強する自戦記です。

目次では「序盤戦術」「中盤戦術」「終盤戦術」と3章に分かれていますが、いずれも初手からの指し手が掲載されていますし、「終盤戦術」だからと言って、序・中盤の解説がないというわけでもなく、いたって普通の自戦記となっています。

ただ、掲載全21局中の4局が、当時小林九段が得意としておられた「立石流」なので、プロの実戦譜をあまり見ることのない現在は貴重かもしれません。ちなみに小林九段はこの立石流を連採し、1994年の早指し将棋選手権(テレビ東京)で優勝されています。

全246ページの3章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。1ページあたりに進行する手数は5〜15手くらいなので、将棋倶楽部24で5級もあれば、問題なく読み進められるでしょう。

第1局 バランス重視の趣向 対浦野六段 / 対居飛車穴熊
第2局 理想形を許さない発想 対石田九段 / 対位取り
第3局 居飛穴を牽制する構想 対田中(寅)九段 / 対居飛車穴熊
第4局 銀冠破りの研究 対谷川九段 / 対銀冠
第5局 常識はずれの感覚 対富岡七段 / 立石流
第6局 立石流新手順の実際 対深浦八段 / 立石流
第7局 長所を生かす工夫 対森九段 / 立石流
第8局 攻めの見切り時 対屋敷九段 / 対斜め棒銀
第9局 進展性が積極性を有無 対田中(寅)九段 / 対▲5五角
第10局 焦らず力をためるべし 対羽生王座 / 対袖飛車
…ほか、計21局が収録されています。

次の一手を谷川九段は見落としていました

第4局 銀冠破りの研究 対谷川九段より:図は△6二飛まで
ここで▲8六歩は△同歩▲同角△8二飛と回る手があって上手くいかないのですが、先に▲1五歩と突き捨てたのが狙いの一手です。△同歩の一手に▲8六歩△同歩▲同角△8二飛と先ほどと同じように進みますが、以下▲3一角成△8八飛成に▲1三歩が入り、△同桂▲2一角の3手詰めになっています。この歩を取れない後手(谷川九段)は△6四歩としましたが、▲8五歩で先手優勢となりました。

この局面図での端歩を絡めた仕掛けは、小林九段の著書「歩の徹底活用術」でも登場しています(38ページ)ので、お持ちの方はご確認ください。

掲載されている戦型は急戦、持久戦(左美濃、居飛車穴熊)の偏りがなくバランスのとれたものになっています。

しかし、小林九段が後手番のときも盤面図は逆さまに変更されていませんので、盤に実際に並べるときは問題ないですが、本を読むときにはややストレスを感じる人もいるでしょう。

本書は既に絶版となっていますが、古本屋などには置いているかもしれません。前述のシリーズ前2巻を読んでいなくても問題ありませんので、見つけたときは手にとってみてください。

小林九段は「小林健二の将棋 鍛錬千日・勝負一瞬」という実戦集も著しているので、四間飛車党の方はそちらも参考にしてみてください。