藤井猛:四間飛車の急所 Vol.4 最強の4一金型

左金の形を決めないことにより、居飛車の動きを牽制できます
この本の詳細をAmazonで見る

評価:A
対象者:1級〜六段
発売日:2005年3月

四間飛車の急所 Vol.2 急戦大全 上巻」、「Vol.3 急戦大全 下巻」に続く第四巻のテーマは△4一金型の四間飛車です。

△5二金左を保留するこの作戦は、大山十五世名人も採用していた歴史の長い指し方ですが、当時は定跡を外して力線に持ち込むという思惑が使ったのに対し、現代の4一金型の主眼は、この左金の動きをぎりぎりまで保留することによって、相手の指し方を限定させるという点にあります。

序盤の駒組において左金を4一に留めておくということは、当然、その代わりの一手を他に求めなければなりません。下の目次にあるように、その候補手となる△5四歩、△6四歩、△1二香の3手、それに早めに△3二金と上がって全ての急戦策を封じる、計4パターンが解説されています。

後半は藤井九段の実戦譜を見ながら、4一金型での戦い方のコツを学んでいきます。対戦相手が羽生・佐藤・谷川・木村とトップ棋士がほとんどなので、棋譜がそのまま定跡という感があります。

第1部 基本定跡の研究
△5四歩型に斜め棒銀・▲3八飛・▲3五歩・▲4六歩の4パターン
△6四歩型に▲3五歩・▲4六銀・▲4六歩・▲6八金直の4パターン
△1二香型に▲4六歩・▲4六銀の2パターン
△3二金型に▲5五歩・▲6八金直の2パターン

第2部 基本定跡を応用する
さばきと寄せの研究、形の比較、形を生かす戦い方、玉頭銀にチャレンジ、二手損作戦vs棒銀ほか)

すべてはこの基本図から始まります

基本図:▲5七銀左まで 候補手は△5四歩、△6四歩、△1二香、△3二金の4つ。

タイトルに「最強」とありますが、この形を採用したからといって四間飛車側がよくなるわけではありません。居飛車にもそれぞれの手に対する有力手があります。

ただし、我々アマチュアではそれほど見ない形ですので、居飛車党に先んじてこの形の指し方を学んでおけば、四間飛車での戦い方に幅が出で、有利な展開に導きやすいことは間違いないでしょう。

居飛車が選択する作戦は、斜め棒銀、棒銀、▲4五歩戦法などですので、シリーズ前二巻(急戦編 上・下巻)でこれらの居飛車急戦の基本定跡をマスターしてから本書を読まないと、応用が利きませんので注意が必要です。

「四間飛車の急所」シリーズはこの第4巻をもってひとまず終了だそうです。前二冊は高段者レベルを目指す四間飛車党なら身につけておかなければならない定跡ばかりをテーマにしていましたが、本書は絶対に読んでおかなければならないというものではありません。類書がないという点では貴重ですが、A評価(前二冊はS)にしました。

藤井九段の浅川書房「最強将棋21」シリーズは本書の後、「相振り飛車を指しこなす本 Vol.1」が出版されています。こちらも名著と言うにふさわしい出来ですので参考にしてみてください。