窪田義行:窪田流四間飛車

対居飛車穴熊と山田定跡を詳しく解説
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評価:C
対象者:8級〜二段
発売日:1997年6月

新進気鋭の若手振り飛車党(窪田、鈴木、久保、杉本)による四間飛車ガイド「振り飛車新世紀」シリーズの第一弾は、その力強い捌き、独特のしゃべり方と挙動で人気(?)の窪田六段が登場です。

雑誌「将棋世界」の人気連載コーナー「対局日誌」では、河口老師に『とにかく落ち着きがない』『着手するときに首をかしげて、視線はあさっての方向を向いている』と書かれ、それ以来どんな人だろうかと思ってきたのですが、銀河戦とNHK杯を見て納得(笑)。濃いキャラクターが多いプロ棋士の中でも、特にキャラが立った方でした。

発売から10年近くたって既に絶版となっているこのシリーズですが、今振り返ると窪田六段の名前だけが浮いているような感じがします。

全223ページで講座編と自戦記の2部構成、盤面図は見開きに4枚配置されています。

第1部 定跡編
対居飛車穴熊編
山田定跡編
その他急戦編(棒銀、鷺宮定跡)
窪田流棒銀対策▲5七金型

第2部 実戦編
玉の位置が勝負の要―対堀口一史座四段
二度の組み合い―対滝誠一郎七段
飛車の切り違い―対先崎学六段
6筋の攻防―対坪内利幸七段
一瞬のすきがあだに―対飯塚祐紀四段

▲4五歩と突いて角打ちのスペースを作る

山田定跡編より:図は△3三角まで(便宜上、先後逆にしてあります。)
山田定跡の手順で角交換をして△8六歩とせずに△3三角と打った場面です。ここで▲5六角が相手の飛車の頭に蓋をする狙いと、▲8九の桂馬にヒモをつける有力な一手となりますが、本書ではこの手の解説と共に、図で▲4五歩とする形を解説していきます。以下△8六歩▲4六角△8四飛▲8六歩△同銀▲6六銀と進みます。

対居飛車穴熊の章は、「藤井システム」とコンセプトは同じで、居飛車穴熊の完成前に積極的に動きます。具体的には玉の囲いと移動を後回しにして、1.早めの▲3七桂馬→▲6五歩で角道を開ける→▲2五桂馬で後手の△3三角をどかして、角のラインで居飛車穴熊の玉を睨む(もしくは端攻め)、2.早めの▲5六銀で相手の角頭を狙い、△4四歩には即▲4五歩〜▲3七桂と仕掛け、△2二銀と穴熊のハッチが閉まる前に戦いを始めます。

急戦ではこの手の本にしては珍しく「山田定跡」にページの多くが割かれ、中でも△3三角に対する▲5六角と打つ変化と、▲4五歩から▲4六角と打つ変化を中心に詳しく解説されています。

対棒銀は▲9八香車・7八飛・5七角・6八金の最強の構えで迎え撃つ形のほか、仕掛け前の段階で早めに▲5七金とあがる著者オリジナルの「窪田流」を解説しています。

窪田六段はこの▲5七金と力強く上がる手が好みのようで、対鷺宮定跡で△5三金と上がる「窪田新手」も披露しており、島八段の著書「新手年鑑 Vol.1」で掲載されています。ただし、島八段の解説は「やや無理筋〜善悪はともかく〜」と微妙なフォローがついていました(笑)

常に四間飛車側が先手になるように配慮されており、後手番の場合も逆に盤面をひっくり返していますので非常に読みやすいです。

ただ、前半の対居飛車穴熊の章が今見ると不要のような気がします。速攻に対して端歩を受けたり、右銀を上がっていなかったり、安易に穴熊に潜る(現在なら△3二金と△5三銀と自陣を引き締めてから△1二香とします)など、居飛車側の無策が目につきます。

第二部は自戦記ですので、実際に講座として今でも読めそうなのは対急戦の章だけです。既に絶版になっていますが、今となってはあらためて手に入れて読むほどの本ではないと思います。

また、窪田六段はシリーズ最終巻「窪田流四間飛車2 撃退!右四間」も担当しています。ただし、こちらは本書のような窪田六段オリジナルの手はでてきません。

「振り飛車新世紀」シリーズの次巻は久保八段の「久保流四間飛車(上) 棒銀撃破!」となっており、本書の解説手順とはまた違った形で棒銀を迎え撃ちます。