四間飛車道場 第8巻 銀冠vs穴熊

左の金銀の活用が勝敗の鍵を握ります
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評価:A
対象者:5級〜六段
発売日:2002年12月

四間飛車穴熊に対する居飛車の対抗策としては、斜め棒銀に代表される急戦と、居飛車穴熊・銀冠に組んでじっくり戦う持久戦に二分されますが、インターネットなどの早指し戦だと、玉の堅さで四間飛車穴熊に負けない後者(持久戦)の採用率が高いようです。これはその銀冠 vs 四間飛車穴熊に絞って解説した一冊です。

この本で取り上げられている銀冠は中原流と呼ばれ、早めに▲8五歩をついて四間飛車穴熊の急所である8三の地点を睨みつつ、▲8六角〜▲7七桂で相手を押さえ込んでしまおうとする非常に有力な形です。

四間飛車穴熊側は、従来の△7一金〜△7二金の3×3箱型では手詰まりになりやすいので、左側の金を△6三金として相手の出方によって攻めに使ったり、または△7三金と固めたり柔軟性のある形で対抗します。

非常に頻出度の高い局面を基本図として、それ以降を詳しく解説してあるので、居飛車党や四間飛車穴熊党が、共に活用できる一冊だと思います。

ただし東大将棋シリーズに共通することですが、あくまでも定跡解説なので、四間飛車穴熊特有のガジガジ攻めや不利になった時の粘り等の「戦い方」は本書では解説されていません。

四間穴熊党の僕から見ると、対銀冠が一番キツイですね。端歩ついてあるので、堅いだけでなく「玉が広い」ので、97にスルリ逃げられると全然つかまらないことが多々あります。対四間穴熊に居飛車穴熊は面白くないが、急戦一本じゃ心許ないと感じている居飛車党の方にもお薦めです。

四間穴熊党の方は前巻の「四間飛車道場 第7巻 相穴熊」とともにマストアイテムといえる一冊です。絶版になる前に是非読んでみてください。

対四枚美濃やミレニアムなどのほかの持久戦策については、シリーズ次巻となる「四間飛車道場 第9巻 持久戦vs穴熊」で解説されています。