四間飛車道場 第12巻 続・居飛穴

イビアナが端歩を受けた場合の変化を解説
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:5級〜六段
発売日:2003年8月

四間飛車道場 第11巻 居飛車穴熊」に続いて、四間飛車対居飛車穴熊(主に▲6八銀から7九銀の松尾流を目指す形)の攻防を解説していきます。

前巻との大きな違いは、イビアナ側が▲9六歩と端を受けている点です。昔は「イビアナは端歩を受けるな」と言われていましたが、最近では終盤で振り飛車側からの端攻めを一回手抜ける点や、▲9五同歩が次に▲9四歩や▲9四桂などの逆襲を見ている点などメリットもあって、端を受ける将棋も増えてきました。

全219ページの3章構成で、見開きに盤面図が6枚配置されています。

第1章 9六歩型居飛車穴熊の駒組み
第2章 9六歩・7八金型穴熊
第3章 9六歩・7九金型穴熊

第2章 9六歩・7八金型穴熊より:図は△5五歩まで
先手が▲6八銀と引いて次に▲7九銀と松尾流穴熊が完成すれば、渡辺竜王曰く「勝率八割コース」に突入です。振り飛車側はその前に△5五歩と仕掛けたところ(本書ではこの手に代えて△5三銀も解説)です。△5五歩以下は▲2四歩△同歩▲5五歩△4六歩▲同歩△5五銀▲3五歩△4六飛▲3四歩△4四角▲2四飛△2二歩と進みます。

所司七段は『端歩の付き合いは居飛車穴熊が得』としていますが、具体的にどう有利なのかが、しっかりと記されていないところが残念なところで、端を絡めた盤面図は一度も登場しません。

また、実体験からいうと上図のような形では、端歩の交換は玉の逃げ道が広がった四間飛車の方が、一手の価値が大きいと思います。端歩を突いていないこの形は後手の高美濃がほとんど手付かずの状態でも、一段飛車+7一への角のラインで、いきなり詰めろが掛かることがよくあります。そういう意味で△9四歩はかなり大きい、少なくともマイナスにはならない一手です。

雑誌「将棋世界」の人気連載コーナー「イメージと読みの将棋観」でも森内名人(のはず)が同じことを述べておられて記憶があります。だから一括りに『端歩の付き合いは居飛車穴熊が得』とは言えないんじゃないかと…

松尾流穴熊などにおける攻防を勉強したい方は渡辺竜王の名著「四間飛車破り 居飛車穴熊編」も参考にしてみてください。

通常の四間飛車における定跡はここまでで、次巻の「四間飛車道場 第13巻 藤井システム」からは、いよいよ藤井システムが登場します。