佐藤天彦:居飛車穴熊必勝ガイド

渡辺本に限りなく近い構成です
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評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:2008年4月

三段リーグの次点2回獲得による昇段権利(フリークラス入り)を蹴って、そのまま三段リーグに残って話題となった佐藤天彦(あまひこ)五段。昇段後は第39回新人王戦で優勝を飾るなど、期待通りの活躍を見せています。

またオンラインサッカーゲーム「ウイニングイレブン」の熱心なプレーヤーでもあり、一時期は日本ランキングの上位にも名を連ねる程だったそうです(ソースは「将棋世界」の渡辺竜王)。

本書はそんな佐藤五段が、対四間飛車においてその優秀性が広く認められている「居飛車穴熊」の「正しい組み方」と「組んでからの戦い方」をテーマにしてまとめたものです。

全222ページの5章構成で、見開きで盤面図が4枚配置されています。また、著者によるミニコラムも2本ほど掲載。目次は以下の通りです。

第1章 △3二飛型急戦−3筋をめぐる攻防
第2章 △4五歩〜△3五歩急戦−石田流への組み替え
第3章 VS△4四銀型−後手積極策
第4章 VS△3二銀型−後手柔軟策
第5章 VS△5四銀型−後手待機策

即イビアナを目指す手順は先手面白くありません

第2章 △4五歩〜△3五歩急戦 より:図は△3五歩まで
四間飛車が△4五歩〜△3五歩から石田流を目指す手順に対して、居飛車穴熊を目座す▲9八香は不急の一手。様々な対策があるものの居飛車良しの結果にはなりません。

この局面では▲7八金や▲6五歩が有力です。▲7八金に△4四飛は▲6五歩△3四飛▲3三角成△同銀▲6八銀上から6・7筋の位を取って先手不満無し。また▲6五歩に△7七角成▲同桂△3三銀▲7八銀から左美濃〜銀冠を目指せば6筋の位が大きく、こちらも先手十分となります。

松尾流に組まれる前に動く

第3章 VS△4四銀型 より:図は△8二玉まで
先手が▲6八銀〜7九銀の「松尾流居飛車穴熊」を視野に入れた駒組みに対して、後手が△4四銀と積極的な構えを取った局面です。

この章では▲6八銀に対して@△5五歩と仕掛ける手順と飛車を軽く捌く狙いのA△5三銀の変化がテーマとなっています。

第2章以降のテーマ、構成は兄貴分でもある渡辺竜王の名著「四間飛車破り 居飛車穴熊編」と同じですが、渡辺本ほどカバーしている範囲は広くないものの、その分ここぞと言う変化は深く掘り下げて研究しているのが特徴です。

また、各章末で「第○章結論」としてそれまでの重要ポイントを再掲載した盤面図を交えながら、わかりやすく解説しているので頭の中で要点整理が簡単にできるのも便利ですね。

以前と違い振り飛車の対策が進んだ現在は、居飛車穴熊に組むのも細心の注意が必要ですし、急戦策を取られた場合は穴熊を放棄することも考えなければなりません。また、組んでからの戦いもなにかと苦労します。

本書はその2点についてのポイントを押えていますので、漫然と組んで作戦負けになっている方には大いに参考になるでしょう。

ただし、上記の渡辺本の完成度があまりにも高く、内容の大部分が重複しているので、そちらをお持ちの方が改めて読む必要はないと思います。