中田功:コーヤン流三間飛車の極意 実戦編

前二巻の捕捉という意味合いが強いです
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2004年9月

本書は三間飛車の第一人者である中田功六段が手掛けて好評を博した、「コーヤン流三間飛車の極意 急戦編」と「持久戦編」に補足・実戦集を追加、という形でまとめられたシリーズ総集編ともいえる一冊です。(表紙デザインは前二冊から一新され、より洗練された感じになっています)

222ページ、見開きに局面図が4枚の全五章構成となっています。

序章 コーヤン流の確認
第一章 超急戦に対する積極策
第二章 急戦の新研究
第三章 居飛車穴熊の新工夫
第四章 実戦編
第五章 思い出の棋譜

「コーヤン流の第一の狙いは玉頭戦にありますので、邪魔な飛車を▲7八にどかす」(序章・8ページより)とあるように、コーヤン流では@飛車の活用よりも、まず▲7七角(相手玉を常に照準内)&▲4五歩・4六銀で相手玉頭への厚みと自玉の広さを確保する、というコンビネーションに主眼を置く。Aその後、機を見て▲5八飛と振りなおして中央から動く。以上の2点が持久戦のポイントとして挙げられています。

『超急戦に対する積極策(一章)』では、三間飛車側が△8二玉とした状態(△7二銀が入っていない=△6一金が浮いている)を捉えて、居飛車側が▲5五歩△同歩▲4五歩△同歩▲3七桂と速攻を仕掛ける手順が詳しく解説されています。

前巻の『コーヤン流三間飛車の極意 急戦編』では、△8二玉をやや危険として代わりに△9四歩を中心に採り上げていました。

『急戦の新研究(二章)』では▲5七銀左・3七桂からの▲4五歩急戦の変化で、▲5五銀(前巻で主に解説)に代えて▲4四歩とした場合を解説しています。この章は以前レビューした『定跡外伝』でも詳しく書かれているので、併読すると良いかもしれません。

『居飛車穴熊の新工夫(三章)』では、居飛車側が右銀を△6二で保留する指し方を紹介しています。利点としては、一手早く居飛車穴熊に組める&△4二角と引いた時に角道(△5三の地点)が空いているので、次の△8六歩が狙える、という点です。

第四章の実戦編では自戦記形式で計八局(急戦・居飛車穴熊以外にもシリーズでは採り上げていない対串カツ囲いもあり)、第五章では棋譜に簡単な注釈をつけた形式で計五局(ちょっと古い)を紹介してあります。なお、第五章の対大山康晴戦は最初で最後の師弟対決だったそうです。

『実戦編』とタイトルがついていますが、どちらかというとシリーズ前二巻の補足・まとめという感が強いので、前の二冊を読んでから本書で勉強すれば、変化に穴が開くことなくコーヤン流をキチンと学ぶことができると思います。