中田功:コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編

角筋で常に居飛車穴熊の玉を射程に入れるのがポイント
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評価:A
対象者:5級〜三段
発売日:2003年4月

ここ1年くらい、インターネット将棋道場 将棋倶楽部24では三間飛車がちょっとしたブームになっています。24最強の三間飛車の使い手saizohさんの華麗な捌きに惹かれて皆が指し始めたのだと思います。

そんな三間飛車ブームにMYCOMが乗っかったかどうかは定かではありませんが(笑)、久々に出た三間飛車の本がコーヤン流三間飛車の極意です。

対持久戦ということで、居飛車側の囲いを左美濃・居飛車穴熊(△6四銀型・△4四歩型・△4二角型)に絞って解説してあります。

コーヤン流の特徴として、@▲4五歩と4筋の位を取り、▲7七の角の利きで相手玉を常に睨んでおく。A対居飛車穴熊では、玉を▲2八へ移動させるのを後回しにして(場合によっては▲3九のまま)、▲3七桂と跳ね、次の▲4五桂の角銀両取りを狙いにして、相手に4枚穴熊に組ませない。(△4四歩と突かせる)点が挙げられます。

対左美濃が30ページ、対居飛車穴熊がその倍の65ページとなっており、研究編の後は『穴熊囲いを崩すテクニック』と題して、居飛車穴熊攻略に必要な基本手筋を分かりやすく解説してあります。

残りの80ページはコーヤンの三間飛車の好局自戦記となっており、対先崎・堀口(一)・上野・室岡戦をピックアップ。

これから三間飛車を始めたい方、コーヤンやsaizohさんのように、左辺を綺麗さっぱり捌く鮮やかな勝ち方に憧れる三間飛車党の方に、良い本だと思います。シリーズとしては急戦を扱った「コーヤン流三間飛車の極意 急戦編」も出版されています。

また、対居飛車穴熊に絞った三間飛車の棋書では「下町流三間飛車」が、本書とは違った戦形を紹介していますので、そちらも参考にしてみてください。

一方、居飛車党でコーヤン流による理想形を阻止したい場合は、勝又六段の名著「最新戦法の話」の第8講〜コーヤン流の話を読むことをオススメします。中田功六段本人が『正直言って、今は思うように戦えていません』と認めているように、具体的な居飛車穴熊側の対策が詳しく解説されています。

簡単にまとめると、1.金銀の動きは後回し。早めに△4二角と引き、攻めの態勢を作る。2.振り飛車はまだ反撃態勢が整っていないので、▲6五歩と突き、△8六歩からの仕掛けの最後に▲6六角を用意しておく。3.そこで△7三桂馬と跳ね、6五の歩を狙う。4.このように角桂の動きで振り飛車の攻めを牽制しておいてから金銀を動かす。5.場合によっては△6四歩からの攻めを狙う。こういう流れになります。