真・石田伝説

アマ考案の楠本式・立石流も登場します
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評価:A
対象者:5級〜二段
発売日:2003年2月

真・石田伝説・・・なんだかはなわのNEWマキシシングルか?と勘違いしてしまいそうなタイトルですが、本書は人気戦法である石田流をオーソドックスな升田式から、アマ考案の楠本式・立石式(=立石流)に至るまでバリエーション豊かに解説した一冊です。

なお、1992年にマイコミュから刊行された「秘法巻之五 真・石田伝説」に第六章を加筆したものです(後書きより)。

235ページ、見開きに局面図が4枚の全六章構成です。

第一章 升田式石田流 不世出の天才が生みだした不滅の戦法
第二章 立石式石田流 進化する石田流の最新形
第三章 楠本式石田流 居飛車穴熊対策の秘密兵器
第四章 中飛車型石田流 飛車角乱舞の徹底抗戦
第五章 急攻石田流  居飛車の持久戦を粉砕
第六章 21世紀の升田式 現在もなお進化を続ける石田流

第一章は升田式石田流。(石田側が後手ですが、便宜上盤面はひっくり返してあります)
居飛車の早石田対策である@▲4六歩に対して、A-いきなり△3六歩とつっかける変化(以下、角交換から△1五角→飛車交換と激しい)、B-△7二玉 ▲4七銀と穏やかに指して、後に△3四飛車(→角交換)→△3二金と正調升田式に組む形、A五手目▲6八玉型に対して、△3二飛車と振り▲2二角成△同銀 ▲6五角△4二金とする形が解説されています。

以前レビューした島ノートにも早石田の項目がありますが、石田側が先手になっています。見比べてみるのもいいでしょう。

なお@-Bの変化は第六章とリンクしています。

升田式石田流より(便宜上先後逆)

第二章は「升田幸三賞-特別賞」を受賞した立石流(アマ強豪の立石勝己さん考案)。

ご存知の通り、四間飛車側から▲6五歩と角道を開け、△8五歩にも堂々と▲7五歩と突く独特の序盤が特徴です。

本章では▲7八金から@角交換後、▲7六飛の浮き飛車から、低い陣形を生かして飛車交換を狙いにする指し方。

A居飛車側が△5五歩と角交換を拒否する指し方。B▲7六歩△3四歩▲2二角成り△同銀▲7七桂馬から立石流を目指す指し方の3つが中心になって解説されてあります。

第三章は対居飛車穴熊用の楠本式石田流(アマ強豪の楠本誠二さん考案)。

図のように居飛車穴熊にも負けない玉の堅さ、遠さから強気に捌いていく指し方を解説。

美濃囲いでは珍しい▲1八玉が主眼の一手で、相手の角道から玉をそらすと共に、後に▲3七角成りから▲2八馬と引きつける変化もあります。

楠本式石田流が考案されたのは、対居飛車穴熊に有力な対策が乏しかった頃ですので、この▲1八玉は対イビアナ戦において流された楠本氏の汗と涙の結晶のような気がします。

第四章はゴキゲン中飛車の一変化でもある、▲5八飛車−5五歩−7八金の形から▲7五歩と位を取り、▲5六→7六と飛車を転換させる形の解説。

ケインはアマゾンで目次も見ないで(←冷静さゼロ)、オンライン注文しましたが、その直後にマイコミュのHPで「石田流道場」の発売日が発表(12月 14日)。凄いタイミングの行き違いでがっくりきましたが、読んでみると「石田流道場」では採り上げられないであろう戦法が多かったので、全く別物として読むことが出来ました。

東大将棋ブックスほどの綿密さがない代わりに、「いっちょ(升田式・立石式・楠本式)石田流を指してみるか」という読後感が本書にはあります。

既に石田流をメイン戦法として指している高段者には物足りないかもしれませんが(特に第一章)、そうでない方にはオススメできる一冊です。