鈴木輝彦:将棋戦法小事典


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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:1992年5月

将棋が最も強いプロマジシャン…じゃなかった、プロ棋士の中で最もマジックが上手いといわれる鈴木輝彦七段が講師を務めた「NHK将棋講座(1991年4月〜1992年3月)」のテキストを加筆して単行本化したものです。

テーマとなっているのは全戦法の基本のマスターです。四間・三間・向かい・中飛車、矢倉、相掛かりなどの本格戦法から筋違い角や鬼殺しなどの奇襲戦法までを細かく分類して、その指し手を網羅しています。

全334ページの13章構成で、見開きに盤面図が最大で8枚配置されています。

第1章 四間飛車
第2章 中飛車
第3章 三間飛車
第4章 向かい飛車・相振り飛車
第5章 穴熊
第6章 矢倉
第7章 棒銀・早繰り銀
第8章 腰掛け銀
第9章 相掛かり
第10章 ヒネリ飛車
第11章 横歩取り
第12章 ハメ手
第13章 常識のウソ

居飛車持久戦VS石田流には常にこの筋があります

第5章 穴熊より:図は△9四歩まで
ご存知の方も多いと思いますが、ここではまず▲1五歩△同歩▲2四歩と2つの歩を突き捨てます。▲2四歩の取り方は3つありますが、△同歩は▲1五香、△同飛は▲同飛△同角▲4一飛で先手良しです。

問題は△2四同角ですが、そこで▲3六歩が攻めの継続を図る好手となります。この歩を放置しておくと、▲3五歩から飛車をなられてしまいますので、△同歩の一手ですが、▲2四飛とバッサリと飛車角交換するのが鋭い一着です。△同歩に▲2三角で居飛車穴熊が必勝とも言えます。

形が少々異なっていても、この狙い筋は有効ですので石田流退治の基本として覚えておきましょう。歩を突き捨てる筋の順番を間違えないようにするのがポイントです。

帯に「全戦法の基本をマスター」とあるように、1992年の時点で指されていた戦法はほとんど載っています。また、三間飛車は対急戦の▲5七銀型、▲6七銀型、▲8八飛型といったように、各戦法が相手の仕掛けや形にあわせて細かく分類されており、辞典の名に恥じない内容です。

掲載されている変化手順は有段者の方でも勉強になるほど細かく書かれており、それでいて盤面図が見開きに8枚あるので読みやすいのが特徴です。

森下九段の定跡入門書「将棋基本戦法 居飛車編」、「将棋基本戦法 振り飛車編」では易しすぎると感じる中級者以上の方は、本書がオススメです。出版されてから10年以上経っていますが、戦法の根幹となる部分は変わっていませんので問題ありません。

オールマイティーを目指す方だけではなく、これといって好きな戦法が見つからない方も、参考になると思います。続編となる「続・将棋戦法小事典」と合わせて読むと基本はまず完璧です。