金子タカシ:寄せの手筋168

オークションンでの価格高騰に注意(笑)
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評価:S
対象者:12級〜四段
発売日:1988年11月

遂に復刊されます! 絶版となった本書を全面的に改訂、決定版・完全版として「寄せの手筋200」が浅川書房より遂に発売となりました(レビュー済み)。オークション価格の高騰で前書が入手できなかった人にとっては朗報ですね。

本書は棋書を読むのが好きな方なら、一度は耳にした事があると思われる不朽の名作です。最近でこそ『寄せ』のジャンルに多くの好著が見られるようになりましたが、15年以上も前にこれほどクオリティが高い本が出版されていたことが驚きです。

206ページ、見開きに局面図が4枚(左ページに問題、翌ページ右に解答・解説という形)の全11章構成です。

また各章の問題を基本問題・必修問題・応用問題・発展問題と4段階レベルにマークを付けて分けてあるので、反復練習が無駄なく出来る作りとなっています。

五手必至が掛かりますがわかりますか?

必至問題より:後手の持ち駒は残り全部
▲2五桂△2一桂▲1三銀△同桂▲3三桂成で必至が掛かります。▲2二龍と▲2三成桂の両方を受ける手立てがありません。

最後はよくある筋に追い込む

必至問題より:後手の持ち駒は残り全部
▲7一銀△同金▲6四桂△同歩▲6三金△8二玉▲7一馬△9二玉▲7二金で必至が掛かります。最初に▲7一銀△同金とさせておいて、金を質駒にしておくのがポイントです。こうしておけば、▲6四桂に対して@8二玉と逃げるのは▲7一馬と金を取ることが出来るため、以下簡単な詰みとなります。

かといってA△6四同歩と桂を取るのも、▲6三金△8二玉と一旦押さえ込んでから▲7一馬とすれば、△同玉と取れない(▲7二金の一手詰め)ため、△9二玉と逃げる一手となりますが、▲7二金とすれば受けなしとなります。

ちなみに7五歩ではなく、9六の地点に攻め方の歩が場合は、全く別の筋で必死が掛かります(ヒント:初手は▲7一金)。本書では発展問題として出題されていますが、腕自慢の方はチャレンジしてみてください。

意外に難問?

必至問題より:後手の持ち駒は残り全部
初手は▲8五桂の退路封鎖が気になりますが、次に▲7二飛成としても、△8二銀の合駒があり詰めろになりません。正解は▲8二銀△同玉▲8五桂△7三金▲8一飛成△同玉▲7三桂成で必至となります。

最初に▲8二銀△同玉と攻め駒に玉を呼び込むのがポイント。こうしておいて▲8五桂と打てば、次の▲7二飛成が詰めろになるため、△7三金と受けるしかありません(△7三飛は▲同飛成から即詰み)が、今度は▲8一飛成と下段に玉を落として、▲7三桂成で手順に金を補充すれば、受けなしとなります。

退路封鎖がカギとなります

難関レベルの必至問題より:後手の持ち駒は残り全部
▲8四桂△同歩▲8二金△9三玉▲7四銀で必至です。▲8四桂に△同馬は▲8二金から詰むので、△同歩の一手。▲8二金△9三玉を決めた後の▲7四銀が絶妙手で、後手は飛車・馬・銀のどの駒で取っても開き王手で詰んでしまいます。

第一章『上から押さえる』1〜3段玉を捨て駒で下段へ→上から縛る形
第二章『挟み撃ちの寄せ』相手玉に左右、上下から必死を掛ける
第三章『馬・角の活用』
第四章『龍・飛車の活用』一間龍の形→金銀での「送り」の手筋他
第五章『退路封鎖』王様の退路である端(1三・9三)への捨て駒他
第六章『基本は頭金』相手の金を斜めに誘って、頭金で詰ます形他
第七章『端玉には端歩』相手玉を端に追いやって、端歩での一手すき他
第八章『腹銀の手筋』
第九章『必殺の両王手』
第十章『寄せのアラカルト』前章までの手筋以外の重要な寄せ方の紹介
第十一章『総合問題』今までの総復習をかねた6問。
(各章末にテーマに沿った塚田泰明九段の実戦譜付きの問題あり)

有段者になるために必要な寄せは全てといっていいほど、本書に詰まっていますので『空いた時間に読む棋書』に本書をローテーション入りさせておいて反復練習すれば必ず終盤力が上がるはずです。

さらに著者の金子さんは必死本の第二弾として「ザ必死!」も書いておられます。もっと問題をこなしたい方は、そちらも合わせてご利用ください。

囲い別の急所は載っていないので、本書の姉妹書となる「美濃崩し180」などとあわせて読むと完璧です。また、初級者から高段者レベルまでの受けの手筋をズラリと並べた「凌ぎの手筋186」も出版されています。