佐藤康光の寄せの急所囲いの急所

囲い崩しの基本が学べる良書です
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評価:A
対象者:10級〜3級
発売日:1995年11月

佐藤康光棋聖が講師を務めた「NHK将棋講座(1994年)」の内容を書籍化したもので、囲い崩しがテーマとなっています。(2008年の講座ではありませんので注意してください。)

攻略対象の囲いは、美濃囲い・振り飛車穴熊・船囲い・左美濃。居飛車穴熊・矢倉と、居飛車・振り飛車党の双方が読めるようにバランスがとられています。

内容は…
対美濃囲い
一段飛車から▲6二銀(△同金は▲7一角)、桂馬をもって▲9五歩の端攻め他。

対振り飛車穴熊
玉頭からのタレ歩・飛車角を切ってベタッと金銀で絡む・マムシのと金攻め他。

対船囲い
一段飛車から▲2四桂〜2三角・いきなり▲3三香車のぶちこみ他。

対左美濃
▲2五歩からの玉頭攻撃・控えの▲2七香・ウサギの耳へのアプローチ他。

対居飛車穴熊
▲9六歩〜9七歩のから▲8五桂の端攻め・▲9七桂成と捨てる端攻め全般他。

対矢倉
△3二金へのアプローチ(横からの攻め)・端攻め・継ぎ歩・十字飛車狙い他…
といったようにそれぞれの囲い崩しに必須の基本手筋が、系統立ててすっきりと解説されていますので、挫折することなく繰り返し読める一冊となっています。

図からいきなり▲3三香車と放り込むのが厳しい。

各章の間に、研究会(島研)での積立金で駒を買った話・奨励会時代の思い出・NHKのアシスタントさん・ボロボロになるまで読んだ将棋の本などのミニコラムが計6本に佐藤棋聖が選んだ『思い出の局面』などと、読み物もおまけ的要素ではありますが、なかなか充実しています。

「金は斜めに誘え」「桂馬と歩を持ったら端攻め」等の格言は知っているけど、囲い崩しにどう応用すればいいかわからない、持ち駒があるのになかなか相手の囲いが崩せない(急所がわからない)、などでお悩みの方には、是非読んでもらいたい一冊です。あくまでも私見ですが、谷川王位の著書「光速の寄せ」よりも、こちらの方がいいと思います。

また、「屋敷伸之の囲いの崩し方」も2005年の「NHK将棋講座」のテキストを書籍化した囲い崩しの本ですが、構成に難があり、本書の方が断然読みやすくなっています。そのほか、囲い崩しの入門書としては清水市代女流による「囲いのエッセンス」や、高橋道雄九段の「将棋手筋の教科書 囲いの崩し方編」などがあります。