将棋世界BOOKS 三段コース問題集

勘を養うためにも役立ちます
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評価:B
対象者:5級〜二段
発売日:2010年5月

専門誌「将棋世界」に連載されている「昇段コース」から三段相当の問題を厳選し、加筆・再構成した「次の一手」形式の問題集です。

雑誌の問題は「初・ニ・三段コース問題」と3つのクラスの問題(計4問)が、同一コースとして掲載されており、どの問題が三段に該当するものなのかは書かれていません。ただし、4問あるうちの後半2つ、少なくとも最後の1問は三段クラスのものと考えて間違いないでしょう。

全222ページの3章構成で、問題は序・中・終盤の3つにカテゴライズして計109問出題されています。目次は以下の通りです。

  • 序盤編(第1問〜第16問)
  • 中盤編(第17問〜第57問)
  • 終盤編(第58問〜第109問)
飛車を逃げる手はありません

序盤編 第9問より:図は△7ニ飛まで
ここでは▲8六歩と戦端を開くのが正解で、以下△同歩▲同角に△8ニ飛には▲3一角成が王手となり、飛車が素抜けますので先手必勝です。

本書では紹介されていませんが、仮に後手玉が1二玉(米長玉)なら、先に▲1五歩△同歩の突き捨てを入れておけば、同じ狙い筋が成立します。すなわち、△1五同歩以下、▲8六歩△同歩▲同角△8ニ飛▲3一角成△8八飛成の際に端の突き捨ての効果で▲1三歩が利き、△同桂▲2一角で後手玉は詰みとなります。

これは谷川九段が対小林(健)九段戦でうっかりしてしまった筋で、我々アマチュア将棋でも頻出です。ご存じなかった方は是非この機会に覚えておいてください。

軽手で優勢に

中盤編 第31問より:図は△4四歩まで
後手陣は好所に馬を引きつけており、将棋はこれからのように見えますが、軽手一発で先手優勢となります。

正解は馬・銀・銀の三枚が利いている焦点に突き出す▲6四歩です。対して@△同銀直は▲6五歩で銀得確定、A△同銀左は▲4四角、B△同馬は▲8三歩成から飛車を取り合って陣形の堅い先手が優勢となります。

強手一発

終盤編 第77問より:図は△3二玉まで
ここでは9九の龍の素抜きを狙った▲3三銀が正解となります。これに対して△同桂は▲2三角△3一玉▲2ニ銀から詰みですので、△同玉と応じるしかありませんが、そこで▲2ニ角が必殺の一手となります。

▲2ニ角以下、@△同玉は▲4ニ龍で詰み、A△2四玉は▲2五銀打△2三玉▲9九角成と、後手の攻めの要である龍を手順に外して先手勝ちとなります。

出題の形式は1ページを使って大きな問題図があり、その下に「角をどう使うか」「先手玉は詰めろです」といったワンフレーズのヒントが掲載されています。

続くページでは、1/4ページほどを使った解答図と応募者の正解率、正解手以降の手順、応募者に多かった不正解手のどこがダメなのかといった点を解説。

一つ上のレベルを目指す方を対象とした「将棋世界BOOKS 四段コース問題集」と比べると、「相手の狙いを消す」「地味な手ながら、次の好手を狙う」といった曲線的な問題は少なく、特に序・中盤の問題は「十字飛車」「銀バサミ」「端攻め」など狙うべき筋がパッと見てわかるものが多いです。

ただし、終盤はともかく、序・中盤の問題をパッと見てわかる=三段ということではなく、問題図における正解手を数手前の段階で読みきっていてこそ、正真正銘の三段クラスと認定されると思います。目的は異なりますが、上級〜有段者の方がネット将棋など時間の短い将棋に備えて「実戦の勘」を養うならば、サクサク読み進めていってもよいでしょう。

終盤の問題は、一般的に自陣・敵陣に大駒を大きく働かせる派手な手が多い傾向にありますが、本書では小駒を細かく利かせるなどバランスの良い配分になっています。正解率が10%台と最難関レベルの問題が出題されるのもこの終盤ですので、腕自慢の方は立ち読みでこの部分だけでも挑戦されてみてはいかがでしょうか。

段位認定の問題集は大きく分けて「将棋世界」の問題をまとめたものと、「週刊将棋」の問題をまとめたものがあります。この手の本は何冊も繰り返して読む必要はない(というか正解を覚えてしまっている)と思いますので、「将棋世界」を読んでいる方は「週刊将棋」の問題集を、「週刊将棋」を読んでいる方は「将棋世界」の問題集を選ぶと効率がよいと思います。