日浦市郎:投了の真相―プロの実戦即詰み100題

全部解けたら間違いなくプロ級
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評価:B
対象者:有段者〜プロ棋士
発売日:1996年3月

プロの対局で実際に登場した華麗な、そして超難解な詰み筋を角・飛・桂・香・金銀と詰みの主役となった駒別にカテゴライズしてまとめた本です。著者は「Zの法則 ゼったい詰まない終盤の奥義」でも知られている日浦七段です。

全223ページの5章構成で、計100問が出題されています。問題図の下にはヒントがありますが、プロ級の問題ばかりですので意味ないです(笑)。解答&解説のページには「詰め上がり図」と「途中図(あるいは失敗図)」が掲載されています。目次は以下の通りです。

  1. 角が主軸編
  2. 飛車が主役編
  3. 桂が主眼編
  4. 香が主力編
  5. 金銀が主体編
これは有名な局面

第10問 92年竜王戦 ▲谷川−△羽生(便宜上 先後逆)より:図は△3四角まで
これは将棋ファンの間では有名な将棋ですね。この局面に至るまでに無条件で△5三歩成とできるところを△5三桂「不成」と指した手は谷川九段自身も「生涯ベスト3に入る手」と語っておられます。

ここでの正解は▲4二銀(!)△2一玉▲2二歩△同金▲3一飛△1二玉▲2一銀△同金▲同飛成△同玉▲2二銀△同玉▲3一角△3二玉▲4一銀不成△3一玉▲3二金までの17手詰めです。

初手の▲4二銀に対して△同金も▲5一飛△4一銀▲同桂成△同金▲同飛成から清算して、変化はあるもののいずれも詰みとなります。恐るべし光速流!

これは簡単

第11問 94年棋王戦 ▲森内−△日浦 より:図は△2二銀打まで
本書では数少ない簡単な問題。こういうのがあるとホッとします。

正解は▲2一龍△同玉▲3二金△1二玉▲2二金△同銀▲2四桂△同歩▲2一銀△同玉▲3二金△1二玉▲2二金△同玉▲2三銀△3三玉▲3二角成までの17手詰めです。

各章の冒頭ではテーマとなっている駒の活用アドバイスが簡潔に掲載されていますが、愛棋家なら誰でも知っている程度の話ですので、本書レベルの問題の前には何の役にも立ちません(笑)。

初段前後のレベルで解ける問題は全体の15%ほどで、残りは谷川、羽生、佐藤、森内をはじめとするプロによる長手数の詰みとなっており、難易度のギャップが大きいのがネック。著者も「解ければプロ級」と太鼓判を押している問題も出てきます。

手数が比較的短くても、普通の詰め将棋ばかりやっていると盲点となりやすい筋(初手から駒を取る)が登場したり、駒が余ることも当然あります。こういった実戦ならではの要素も難しく感じる原因かもしれませんね。

日頃から「詰め将棋パラダイス」を解いている詰め将棋ファンや高段者、奨励会会員の方を除けば、問題を解くというよりもプロの技をひたすら堪能するというのが正しい読み方ではないでしょうか?

なお続編となる「投了の真相2 実戦詰みの急所」では、同じプロの実戦詰め将棋でも手数の短・長と問題のレベル分けがなされています。実力養成のために読むなら続編の方が価値は高いでしょう。