青野照市:読むだけで強くなる終盤のコツ130

必至、囲い崩し、受けの必修手筋が習得できます
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評価:A
対象者:5級〜二段
発売日:2006年9月

本書は、北海道新聞に連載されていた青野九段の将棋コーナー「終盤に強くなる」を加筆・訂正して単行本化したものです。

テーマとなっているのは、美濃・矢倉・穴熊などの囲い崩し、必死の掛け方、受け方、実戦型の詰めパターンの習得など、終盤を乗り切るために必要な手筋の解説となっています。

読み終わって初めて、新聞連載の講座が本書のもととなっていることに気づいたほど完成度の高い仕上がりになっています。北海道新聞侮りがたし!

全278ページの5章構成で、見開きに盤面図が3枚配置されています。

第1章 囲いの詰め手筋 (美濃囲い、矢倉、実戦型の詰め手筋)
第2章 必至の手筋 (必至のパターン、詰めろ逃れの詰めろ)
第3章 一手勝ちの手筋 (一手勝ちを読む、一手を稼ぐ受け)
第4章 合い駒と詰む駒を読む (合い駒を読む、詰む駒を読む)
第5章 囲いの崩し方 (矢倉、美濃、穴熊の崩し方)

対美濃囲いの終盤

第2章 必至の手筋より
▲7四桂△9二玉▲8二金△同金△7一銀までの5手必至です。5手玉には受けるスペースがなく、△7四歩と桂馬をとっても5五の角が利いているため、▲8二金で詰みます。

美濃崩しには角と桂のコンビによる手筋がたくさん登場しますが、これはその中でも代表といえる問題ではないでしょうか。以前レビューした「美濃崩し180」のページの1枚目の盤面図もこの手筋ですね。

中合いの問題です

第4章 合い駒と詰む駒を読むより:図は△2五香まで
▲2五角△同香▲1六玉で詰みを逃れることができます。同じ「中合い」でも、前に利く駒は△同香▲1六玉の際に、1五へ捨て駒されて簡単に詰みます。また、▲2五桂も△同香▲1六玉△2四桂▲2五玉△3三桂▲3四玉△4四金でアウトです。

実体験で言うと、このパターンは1筋の突き合いが入っていないことが多い、振り飛車穴熊 VS 居飛車急戦に多いですね。「ああ、中合いの筋があったかも…」と気づくのは、投了して、『(将棋盤を)閉じる』ボタンを押してからですけどね(笑)。

実戦において、こういった「中合い」を数手前から読みきることができればかなりの実力だと思います。同じ中合いでは、「凌ぎの手筋186」の2枚目の盤面図がすぐに読めたらプロ級です。腕に覚えのある方は是非チャレンジしてみてくださいね。

攻め(詰め将棋・必至・囲い崩し)と受けをまとめて1冊に収めていますので、登場する問題は絶対に押さえておきたい手筋ばかりです。

したがって、掲載されている問題は有名なものが多く、既に終盤に関する棋書を複数お持ちの方にはどれもお馴染みの局面図ばかりでしょう。

ただし、双方の玉を配置して速度計算を問われる問題や、手持ちの持ち駒に「どの駒をプラス」すれば、相手玉に詰みが生じるかを考えさせる問題など、他ではあまり見られない工夫もなされています。

青野九段の解説もわかりやすく、例えば「敵玉を寄せる場合、一瞬でも盤上から攻め駒が消えてしまうような清算をせず、常に手掛かりの駒が残るような寄せを心掛けると、捕まえ損ねることがなくなる。」といったような、実戦で使えるアドバイスが正解手順と共に掲載されています。

さらに、テーマ図の解説の後には、同じ狙い筋を扱った類題図も一緒に掲載されていることもあり(ページの関係でない場合もあります)、ボリューム的にも満足できる内容となっています。

既に「寄せ」と「受け」の本を数冊読破した方には必要ありませんが、まだ終盤をテーマにした手筋の本を持っていない方は、あれこれ買わなくても済むので大変オススメです。

ただし、「詰めろ逃れの詰めろ」、「中合い」などややレベルが高い問題が多く、入門書的な一冊ではないので注意が必要です。

終盤の総合書では本書のほかに「谷川流寄せの法則」や「終盤の定跡 基本編」、「寄せの棋本戦術」などがありますので、そちらのページも参考にしてみてください。